一言で言うと、文字通り「筋が悪い」小説。
日本一の産科医局を持つ帝華大学(聖○○大?)の助教が、教授に反旗を翻して、痴呆の産婦人科を救うという、最終的には爽快かもしれない作品。
いつもの海堂節で、巨悪や既得利権をバッサバッサと切りまくるのかと思いきや、あっちもこっちも中途半端でわけがわからない。最後の章までオチを隠していたんだろうけど、そこまでの消化不良感は、他の作品に増してひどい。
さらに、助教と准教授が不倫してただの、都合の悪い胎児は流産や奇形にしてしまうだの、まさかの4人同時分娩だの、都合が良すぎるストーリーには唖然とする他ない。
また、「チームバチスタ」で麻酔科医に「そんなことしない」と突っ込まれていた以上に、素人が見ても産科の現状を反映していると思えない、切れ味の悪い文章かつ、発生学の知識も中途半端で、全体になまくら。いつも後半はダラダラの支離滅裂とはいえ、本作は前半から支離滅裂で、かなり読んでいて辛かった。
いつもの医療行政に対する批判も、いつも以上に空回りしているように思える。根のある部分は、スーパーローテーション批判だけ。地方の医療崩壊や、産科崩壊の本質をついているとは思えない。
最後の章で若干救われた(ありえないけど)感は無きにしもあらずとはいえ、これが面白くて映画化したの?もうちょっとなんとかならなかったんでしょうかね。
あと、「ワルツ」が「コドン」というのも、高校生レベルで、そんなもんを遺伝とくっつけるのは、安易すぎる。「遺伝」は、蛋白質をコードしている部分だけじゃない。研究もいまいちだったのかなこの人。
- 感想投稿日 : 2017年2月6日
- 読了日 : 2017年2月6日
- 本棚登録日 : 2017年2月6日
みんなの感想をみる