コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書) (ちくま新書 800)

著者 :
  • 筑摩書房 (2009年8月8日発売)
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感想 : 75
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自治体はしばしば株式会社に例えられる。実働部隊たる行政職員が社員であり、納税者たる住民が株主であると。

実情を鑑みれば、確かにこの例えは自治体のある側面を捉えているといえると思う。……が、俺は以前からこの例えに違和感をもっていた。どこか住民を客体化しているような気がして。

本書の著者も「(略)市民は“株主”に対応するともいえるが、見方を変えれば、市民は、その人が住んでいる「○○市」という団体の“社員”ともいえるかもしれない」(p53)と述べている。専門の学者先生が同じように考えていることが単純にうれしかった。

・高齢者=地域との関わりが強い人々、すなわち、高齢化社会=そうした人々が増える時代、という議論

・福祉に都市計画を関連させるという視座

・ストック(資産)の格差と社会保障の関係

など、中盤では実務的な示唆に富んだ議論が盛りだくさんで興味深かった。

終わりの方ではややアカデミックな議論を展開し、今後必要とされるであろう思想の、著者なりの方向性を控えめに示している。
これまでの人類の歴史がそうであったように、社会のパラダイムが大きく変革するときに必要とされる新しい思想が、現代は欠如しているという(現代は資本主義が飽和した時代で、新しい思想が求められているという文脈)。
このような時代に必要とされるのは、「有限性」(限られた資源の中で生きる人間をどのように位置づけるか)と「多様性」(古代から重視されてきた「普遍性」ではなく、むしろ、異なる歴史・風土・文化をもった集団をいかに承認し共存するか)をもった思想だという。

抽象的だし、なんとなく優等生的だけど、このさき現代思想について考えるとき、ここに立ち返って評価するといいかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年11月11日
読了日 : 2012年11月10日
本棚登録日 : 2012年9月22日

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