日本文学100年の名作 第6巻 1964-1973 ベトナム姐ちゃん (新潮文庫)

制作 : 池内紀  松田哲夫  川本三郎 
  • 新潮社 (2015年1月28日発売)
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本棚登録 : 116
感想 : 7

第6巻。表題作は野坂昭如の短編から。
収録されている作家は川端康成、大江健三郎、司馬遼太郎、野坂昭如、小松左京、池波正太郎……など。
第5巻までは全体的な共通点というか、作風の傾向は違えど、共通する雰囲気のようなものがあったが、この辺りになるとそれも薄れ、はっきりと多様化しているのが解る。逆にそれが共通点なのか?
巻頭は川端康成『片腕』。『片腕を一晩お貸ししてもいいわ。』から始まる幻想世界はあまりにも有名。怪奇小説とも幻想小説ともつかないが、非常にフェティシズムを感じる。怪奇幻想の類よりもエロティックだと思うのだが……。
司馬遼太郎や池波正太郎は大衆小説の作家だけあって、長編も短編も面白い。池波正太郎は随分と久し振りに読んだような気がするが、収録作『お千代』は、滑稽味がありながらも不気味な猫の存在感が大きい短編。
イラストレーターとしても活躍する和田誠の小説も収録。『おさる日記』は子供の日記らしい文体がラストにホラータッチのSFへと変化する。
小松左京は名作『くだんのはは』を収録。これも好きだったな〜。『怨念が逆に守護者となる』という発想が特に怖い。
あまり読んでいない作家の中では陳舜臣が良かった。収録作『幻の百花双瞳』は料理人を主人公にした短編で、時間の流れや、主人公の心の変化を描ききった濃密な内容だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年2月3日
読了日 : 2015年2月3日
本棚登録日 : 2015年1月26日

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