(No.13-29) ちょっとだけミステリアス。
『18世紀ヴェネツィア、様々な事情でピエタ慈善院に赤ん坊が連れてこられる。運河に捨てるよりはまし、と。
ピエタ慈善院は音楽院でもあり、開催する演奏会の収入や寄付で慈善院は運営されている。
45年前に捨てられエミーリアはここで育てられ、今も経営のための事務の仕事をしている。一緒に育ったアンナ・マリーアは音楽の才能に秀でていて合奏・合唱の娘たちとして活躍、今は重要な役目についている。
かつて教えてくださったヴィヴァルディ先生が遠くウィーンで亡くなられ、二人は悲しみにくれる。
貴族のヴェロニカはピエタ音楽院で二人と一緒に学んだ縁があり、エミーリアは時々寄付を依頼しに訪ねる。先生が亡くなられた後、ヴェロニカはエミーリアにある特別な楽譜を探してくれるように頼む。もし見つかったら大口の寄付をする約束と共に。
エミーリアは楽譜を探し始めるが、その過程で今まで知らなかったヴィヴァルディ先生の過去を知っていく。』
私は音楽関係の知識がなく、興味もあまりありません。ヴィヴァルディは名前はさすがに知っていましたが、司祭だったとか、音楽を教えていたとか、そもそも生涯について全く知りませんでした。
この小説を読むにはそういう知識は全く必要なかったのが私にとっては良かったです。音楽好きの人だと、あれが書いてないとか、それは違うとかいうのがあるかもしれませんが・・・・。
ヴェネツィアはファンタジーなどでもよく扱われるので、何となく馴染みがあります。雰囲気は私が擁いていたイメージどおりでした。
読み始めたときはエミーリアとアンナ・マリーアの話かと思ったのですが、いつの間にかアンナ・マリーアは蚊帳の外になっちゃって、ヴェロニカの比重が大きかったです。
こうしたのは、同じような生まれ育ちの二人より、一時交差したけれどまったく境遇が違う二人の方が物語りに深みがでるからでしょうか。
主役はエミーリアですが、この物語の中心になったのはヴェロニカだと思います。途中ではクラウディアが一番魅力的かなと思いましたが、最後まで読むとヴェロニカの方が貫禄も魅力も圧倒してました。
この後ヨーロッパを襲う嵐のことを私たちは知っています。ピエタの娘たちはその時をどう生き抜いたのでしょう。
「よりよく生きよ、むすめたち。よろこびはここにある。」
先日読んだ「ゼラニウムの庭」がとても良かったので、評判が良いこれも読みました。
読んで良かったです。
- 感想投稿日 : 2013年5月20日
- 本棚登録日 : 2013年5月20日
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