伊藤博文: 知の政治家 (中公新書 2051)

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  • 中央公論新社 (2010年4月1日発売)
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初代内閣総理大臣である伊藤博文の,生涯に渡る政治と「思想」を緻密に追った新書.本文全343頁とかなりボリューミーだが,幕末〜明治中期の政治を中心とした時代変遷をたどるには十分な分量である.

内容は,大きく分けて以下のとおり
渡欧・渡米での文明との出会い(~1873, M6),明治憲法制定まで(~1889, M22),立憲後(1899, M32),立憲政友会設立(1900, M33),憲法改革(1899~1907, M40),清末革命(1898, M31),韓国総監(1906~1909, M39~M42)
明治時代の立憲政治の確立に関しては 1~3章に伊藤の考え方や,そのきっかけが描かれている.その思想とは,生涯に渡り「立憲政治」および「漸進主義」に重きをおき,国民の知の向上が文明発展のキーであると考えるような,サブタイトルの通り「知の思想家」であるといえる(*あとがき).
そのような文明への感化や漸進主義の芽生えは,1863年の「長州ファイブ」による英国留学,そして1871年の岩倉使節団による渡米が大きく影響している.
その後,憲法制定に向けた模索中のウィーンでのシュタインとの邂逅が,「制度の政治家」としての伊藤を決定付けている.そこでは単なる議会制度を通した民主政治のみならず,それを反映し,実際に国家へと還元するような行政の存在が,"政治"の基盤となる,と述べている.
また,そのような行政を行うに足る人材として,"政談"で事をなすような知識人ではなく,科学技術に居した"実学"を重視するという点も,伊藤の文明観の要点の一つと言える.

以下,漸進主義を踏まえた,君主制・民本制を両立できるような立憲制度の考え方や,政党の在り方(単なる徒党ではなく官民融和し最終的に国家に還元できるような存在),韓国総監時の「文明の伝道師」としての側面等が述べられている.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年1月14日
読了日 : 2015年1月14日
本棚登録日 : 2015年1月14日

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