世界規模で広まる感染症 "白の病"。突如、視界が白くなり、何も見えなくなってしまう。政府は隔離政策をとり、収容所へ集められ…。物語の大半は、その収容所のできごとになる。
思い出すのは "es" という映画だ。メジャー作品ではないが、看守と囚人に別れた心理実験の映画で、一般社会とは隔絶された社会の中での精神状態の暴走を描いた作品。同様に、治療方法の分からない感染症のため、政府から見放された収容所で起こる事態が、"es" を彷彿とさせるのだ。視覚を奪われた閉鎖空間の中では、外の世界の地位や所得、美貌やファッション、人脈や知識などなど…は、すべて価値を失う。新しい価値観の中で、新たなパワーバランスが構築されてゆく。
病に冒された夫に付き添い、一緒に収容所に入ったジュリアン・ムーア。彼女は "白の病" に伝染しない唯一の存在として登場する。人の情報源は視覚情報が 90% を占めると言われるが、収容所の中では、視覚を失っていない彼女は圧倒的な力を持っているにも関わらず、その力を誇示することなく献身的に過ごす。その気になれば王にもなれるというのに…。ま、小さな世界ではあるが。
この映画、視覚を奪われた多数の人たちと、視覚を持ち続ける少数者という構図だが、世の中には視覚以外でも "見えないもの" & "一部の人だけが見えるもの" がたくさんある。例えば、パワーバランスだったり、マネーパワーバランスだったり…。そーゆー図式に当てはめてみても、なかなかおもしろい側面が見えてくる。
ウィル・スミス主演の "アイ・アム・レジェンド" によく似ているが、"見える/見えない" という点をテーマとして取り上げている点で、 "アイ・アム・レジェンド" よりも現実に当てはめて、いろいろ考えてしまう作品だった。
- 感想投稿日 : 2013年5月13日
- 読了日 : 2013年5月12日
- 本棚登録日 : 2013年5月12日
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