文武朝から光仁朝までの奈良時代、つまり平城京に都が置かれていた時代を扱う。
文明国家としての体裁を整えるために、律令を整備し、中央集権体制を作り上げ、国史を編纂し、唐から高僧を招く。一見地味な時代のように見えて、全力で新国家建設にまい進しているダイナミックな時代だと思う。著者のあとがきを借りると、「平城京の時代は、文字を操ることを覚え、自我が育ってきた時期という意味では、むしろ少年時代、と呼んだ方がよいのかもしれない」。
この奈良時代は日本国家の成立する最終段階と考えてもいいかもしれない。その出発は、2~3世紀ごろ、奈良盆地に発生した大王家と古代豪族の連合政権であるヤマト王権だった。その後500年近くかけて、大王家が列島全域を支配下に組み込んでいく。その過程が日本古代史そのものだと思う。その過程で、大王家は天皇家として突出した存在となり、物部、大伴、蘇我、葛城 etcという土着豪族は消え、古代氏族は中世的貴族に変貌する。
本書の最後に、歌人として有名な大伴家持が祖先を誇る歌が紹介されている。大伴氏は大王家に武力で仕えた古代の名族。平安時代に藤原氏との政争に敗れ没落していく。寂しいようでいて、新しい時代を感じざるを得ない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
古代史
- 感想投稿日 : 2013年4月21日
- 読了日 : 2013年4月21日
- 本棚登録日 : 2013年4月21日
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