チョコレートの真実 [DIPシリーズ]

  • 英治出版 (2007年8月27日発売)
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感想 : 56
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成毛眞氏書評からのリファレンス。タイトルのとおり、古代マヤ文明において神々の食べ物とされたカカオ歴史、チョコレートの製品化とリーディングカンパニーの変遷。そして世界規模の格差を浮かび上がらせる現代のカカオ生産ビジネスが抱える暗部。

チャーリーとチョコレート工場(あの映画は1971年にも、チョコレート工場の秘密として映画化されている)にはちゃんとモデルがあって、それは自身の名前を冠する町ハーシーを建築し、孤児を引き取り育てたミルトン・ハーシーだった等のくだりは、当時のヨーロッパ企業とアメリカ経済の絡みかたまで俯瞰でき楽しい内容だった。

しかし、カカオ生産ビジネスが今なお抱える、児童強制労働にまつわる疑義は、ジャーナリズムの錯綜などに起因し問題が混迷を極めており、読んでいて出口のない迷路にいるような錯覚を覚えた。

本書によれば、カカオ生産世界一を誇るコートジボワールの農園で、マリから労働力として調達される児童は10年近くに及ぶ無償の労働と虐待を強いられているケースがあり、こうした児童は、自分たちが「奴隷」であるという認識すら持たされず、労働を終えて帰国して以降も社会に適合することができず、ギャングになるほかの人生は残っていないとされている。

カカオ生産に限った話ではないかもしれない、このような人権問題を可哀想だなどという気持ち一つで、助けてあげたいというアプローチを取ることは、真実と解決への道を曇らせてしまうのかもしれない。一方で、本質的な問題の一つは、マリの児童たちは家族によって送り出されており、それを輸送する人も、罪悪の意識は希薄だという。人格すら十分形成されていない児童から人生を奪ってしまっている行為の連鎖を、本質的に断ち切るのは、「自尊心」なのかもしれないと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年1月18日
読了日 : 2013年1月18日
本棚登録日 : 2013年1月18日

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