ミステリ、といっても、王道なミステリではない。造語で語るなら、ダーク・メルヘン・ミステリ、というところか。
あらすじ。物語は、小学生の主人公であるミチオが、夏休み前の終業式の日に、クラスメイトであるSくんの首吊り死体を見つけるところから始まる。しかし、大人や警察が到着したときには、あったはずの死体が忽然と消えてしまっていた。死体はどこへ消えたのか? そんな不可思議から始まった夏休みのある日、Sくんが、クモに姿を変えて現れる。「僕は殺された。死体を見つけてほしい」……、そうして、ミチオとその妹ミカは、独自に事件を追い始める。
これだけ聞くと、「ぼくのなつやすみ」みたいな、あの夏の日の思い出、……のような草の匂いが強くけぶるノスタルジック作品にも思えますが。
とんでもない。
登場人物がみんな異常という、引き笑いの出る陰鬱小説。
ミステリとしては、真相が特段におもしろいわけではないし、謎解きのシーンにかなりの無理があると感じる。だって主人公は小学生だし。あんな推理無理だし。お前はコナンか。
ただ、この物語の真髄はそこではなく、物語全体に散りばめられた病的な異常性と、不自然なほどの違和感(=作品に仕掛けられたトリック)だと思っています。amazonのレビューでは、
”不自然さを不自然さと感じさせる時点で仕掛けとしてイマイチのような?”
と述べている方がいらっしゃいましたが、読み終わってみると、ちょっと違うかな、と感じました。どちらかというと、作者はあえて不自然さをわかりやすく、感じやすく全編に溶け込ませている。読者が不自然と気づくのは必然で、その異常性や違和感からくる気色悪さが、ラストの更なる異常性へと結実していくようにできているのではないかと。
まぁ、それはそれとして、おもしろいかつまらないかといえば、フツーだったかな。本編中の違和感とは別に、設定自体に無理とアラが目立ちました。
とにかく、夏休み、小学生……というキーワードから通常連想させるミステリを期待して読んではいけません。ここでもamazonのレビューを引用させてもらうならば、
”王道のミステリーがあるとすれば、これは邪道のミステリーです。”
これが非常に的確だと感じました。
- 感想投稿日 : 2015年9月2日
- 読了日 : 2015年7月26日
- 本棚登録日 : 2015年9月2日
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