ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社 (2010年4月23日発売)
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優れた競争戦略とは何か、非常にわかりやすく、ロジカルに解説している著書であり、事例や図を用いてこんなにわかりやすく整理された戦略本は初めてである。

著者いわく、日本の会社で「戦略」と呼ばれてプレゼンされているものは戦略でないことが多い。目標の設定であったり、組織編成であったり、バズワードをちりばめただけで思考停止になっているものだったり、項目ごとのアクションリストだったり、最後には気合と根性だったりする。なんとも耳の痛いコメントである。戦略は一言でいうと「他者との違いを作る」ことにある。

戦略の最終ゴールは長期利益の実現(持続的利益)であり、そのためには戦略は5つのレベルで階層化される。最も下位のレベル0は外部環境の追い風、続いてレベル1は業界の競争構造(ファイブフォースで説明される)、レベル2はポジショニング(何をするか、何をしないか)と組織能力(いかに自社にユニークなやり方)、レベル3が戦略ストーリー(Why)である。戦略ストーリーは5つからなる。競争優位、構成要素、一貫性、コンセプト(本当のところ誰に何を売っているのか)、クリティカルコアである。ストーリーの筋の良さは強さ、太さ、長さで決まる。このクリティカルコアが最上位のレベル0であり、一番目の基盤となり、競争優位源泉となる中核的要素である。近年の競争環境では下位レベルの戦略で優位を持続させるのは以前より難しくなっており、ストーリの一貫性やクリティカルコアで勝負することが重要になっているというのが著者の意見である。

スターバックスの事例でいえば、長期利益の実現のため、WTP増大を目指すためのコンセプトが「第三の場所」である。戦略ストーリーの構成要素としては店舗の雰囲気、出店と立地、スタッフ、メニューがあげられるがなんといっても「直営方式」がクリティカルコアである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営戦略
感想投稿日 : 2016年7月3日
読了日 : 2016年7月3日
本棚登録日 : 2016年5月21日

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