これもある種のメディアミックスなのかもしれません。人気映像作家の新海誠氏が描く映像物語は、映像としての美しさとモノローグの語り口などで、とても秀逸な出来のものが多いですが、その実、物語の背景把握や、突飛な設定の理解に苦しむ時があります。
それはそれで、そういう作品、と割り切ることも出来るのですが、氏の作品をノベライズしたものを読むと、映像の尺では説明されなかった様々な要素を把握することが出来るので、映像作品側への理解が深まります。
逆にいうと、これが小説単体として見た時にどこまで面白いか、というのは難しいところで、読んでる側もどうしても原作となる映像作品に引っ張られてしまうので、それも善し悪しだな、と思うのです。
本作も、きちんとノベライズしていると思いますし、表現のそこかしこにいわゆる「新海節」が挟まり空気感を共通させているのは面白い。でもそれって「技巧」の問題で、小説としての物語性で言ってしまうと、類型的な設定の寄せ集めに感じてしまう。
映像の足りなかったところを補完し、小説の足りていないところは映像で表現されている……そう考えると、映像と小説、両方併せて一作と言った感覚になってしまい、それも悪くは無いのですが、単体としての★はこうなってしまうかな、と。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年6月13日
- 読了日 : 2013年5月19日
- 本棚登録日 : 2013年5月19日
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