李歐 (講談社文庫)

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著者 : 高村薫
とし長さん 文芸・文学・群像劇   読み終わった 

 無気力な日々を過ごす大学生の吉田一彰はマフィアの犯罪計画に荷担する事に。そして当日、事件現場に現れた李歐と名のる殺し屋との出会いが一彰の運命を変えていく。

 この二人の関係性って何なんだろう? 友情でもない気がするし、いろんな方が言っているように男同士の愛の話という気もしますが、それも微妙に違う気もするし。でも確かに言えることは、この二人の関係性がとにかく美しいということでしょう!

 李歐の存在感がとにかく大きい。読んでみると、彼の登場場面はさほど多くないのですが、それでも李歐と一彰が初めて言葉を交わす場面の扇情的な雰囲気は忘れがたいです。その瞬間、読者である男の自分も李歐の魅力からめ捕られたそんな気がしました。

 一彰の人生はかなり波乱万丈。小さい頃の母の蒸発、そしてその後も裏組織が絡む事件になぜか巻き込まれ、平凡な幸せがとにかく遠く感じるような、そんな彼の人生が作中では語られます。

 彼の濃密な人生、裏に控える強大な組織の闇、そして無気力ながらも、どこかで破壊願望や破滅願望を持っているように見える一彰の心理、そうしたものが高村さんの重厚な文体で語られながらも、最後に待ち受けるのは圧倒的なまでに美しい桜景色と大陸です。今までの様々な闇をすべて切り裂くような、その描写はこの世の桃源郷が目の前に立ち現れたかのようです。

 BLっぽい、という話を聞いていて、また背表紙の内容紹介も若干それを匂わせているものだったので、すこし読むのをためらっていた作品だったのですが、読んで良かった、と読み終えて心から思いました。

レビュー投稿日
2015年10月6日
読了日
2015年10月3日
本棚登録日
2015年9月29日
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