新潮文庫100年を記念して出されたシリーズ。100年を10年ごとに分け、その年に書かれた作品を収録したアンソロジー。第1巻は1914年〜1923年。収録作家は荒畑寒村、森鴎外、佐藤春夫、谷崎潤一郎、宮地嘉六、芥川龍之介、内田百閒、長谷川如是閑、宇野浩二、稲垣足穂、江戸川乱歩。
代表作と呼ばれるものが収録されている訳でなく、そのためもあって初めて読む作品が多かったです。それどころか初めて読む作家も。それがこのアンソロジーの魅力にもなるでしょう。活字も大きめで組まれているので、全体的に贅沢な雰囲気が漂います。
10年という時代を切り取っているので、時代の持つ空気感も収められています。鬱々とした自分語りが多く目に付くのは、そういうものなのでしょうか。しかしそんな鬱々としたものも読まされてしまうのです。これが小説の持つ力なのでしょうか。
そんな中、足穂の「黄漠奇聞」のキラキラと煌びやかな幻想世界が印象に残りました。これもきっと時代の空気なのでしょう。
また長谷川如是閑の「象やの粂さん」は物寂しさとカラッとした明るさが同居した感じがあり、悪夢のようなのに思わず笑ってしまうような内田百閒の「件」、独裁者的才能を持つ子どもの怖さが静かに迫る谷崎潤一郎の「小さな王国」、久々に読み返してその面白さを改めて感じた乱歩の「二銭銅貨」が印象的でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年12月9日
- 読了日 : 2015年12月9日
- 本棚登録日 : 2015年11月23日
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