潤一郎訳 源氏物語 (巻2) (中公文庫 (た30-20))

  • 中央公論新社 (1991年7月10日発売)
3.96
  • (17)
  • (10)
  • (19)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 204
感想 : 13
5

第二巻は、恋愛的要素がないわけではありませんが、それ以上に、壮年となった源氏を筆頭に、自分の死後も生きていかなければならない子や孫の人生に思いを馳せ、今自分がどうしておくことが彼らの人生にとって最良の選択であるのか悩みに悩み、時に泣きながらも決断を下す親や祖父母たちの姿が印象に残りました。

息子の将来を熟慮して当時の慣例に反した決断を下す源氏に納得するのはもちろん、それ以上に、3歳の幼い娘の将来を思って、本来なら敵である源氏の正妻・紫の上に手渡すことを決めた側室の明石の君やその両親の心理描写の経過と別れの間際の姿には大号泣してしまいました。哀しみに沈みながらも自分を納得させようとする明石の君と、自分の哀しみをこらえて娘を諭す明石の君の母の掛け合いは本当に見事です。

収録巻としては、源氏の生来の悪癖と宮中の権力争いによって事実上左遷の憂き目をみる「須磨」から栄華を極める「胡蝶」までが収められています。
この巻では、冷泉帝(源氏の隠し子)や夕霧といった息子世代の成長や恋なども描かれており、「源氏物語」が主人公の源氏だけでなく、多くの登場人物の時の流れや成長を描写していることが、物語を壮大なものにしています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2014年3月3日
読了日 : 2014年3月2日
本棚登録日 : 2014年3月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする