ゴッドファーザー PartIII <デジタル・リマスター版> [DVD]

監督 : フランシス・フォード・コッポラ 
出演 : アンディ・ガルシア  ダイアン・キートン  アル・パチーノ  タリア・シャイア  ソフィア・コッポラ 
  • パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2012年3月10日発売)
3.85
  • (75)
  • (86)
  • (77)
  • (15)
  • (2)
本棚登録 : 562
感想 : 72
4

業の深さと孤独から最後の最後まで逃れられなかった男の哀しい末路が胸にくる、名作映画三部作の最終章です。

アメリカでもっとも巨大なマフィア組織の二代目首領でゴッド・ファーザーと称される老境のマイケル・コルレオーネは、非合法ビジネスと決別して合法ビジネスのみで「ファミリー」を守れるようになろうと腐心していました。
それは、彼の若き日からの宿願でもあり、父ヴィトーとの誓いでもあったのです。
しかし、彼にもすでに老いの影がさし、持病にも苦しむ身。

はからずも父の跡を継いだ自身のつらい体験もあったのか、実の息子や娘は「ファミリー」のビジネスから遠ざけていたことと、あるきっかけから、血の気は多いが度胸はある、長兄ソニーの私生児で甥のヴィンセントを後継者候補とすることになります。

しかし、敵対組織との抗争は、ローマ法王庁内部の陰謀ともからまり合いながら激しさを増していく。
そしてそれは、結果的に、マイケルがもっとも守りたかったものをもっとも残酷な形で彼の眼前で奪っていき…。

物語の最後、狂ったように慟哭し、そして、孤独に生を終えるアル・パチーノ演じるマイケルの姿は鮮烈な印象を残します。

三部作を通して観ると、まだ若き日の、家業に踏み込む前のマイケルの純真さや、「ファミリー」(この言葉には「家族」と「マフィア組織」の二重の意味がある)のために修羅の道に踏み込んでしまってからの苦悩や葛藤、彼が何より愛し守ろうともがき続けて結局は失ってしまったものの重さなどが、頭に次々と浮かんできて、哀しみがどっと胸に押し寄せてきました。

実に印象的でよくできた作品だと思います。

ただ、パート1、2の公開から二十年近くが経過していることでコッポラ監督の手法が少なからず変化しているためなのか、もっと別の事情があったのか、パート1、2の魅力の一つであった、哀愁を誘う陰影や空気感、象徴的な演出がほとんど無くなっている点はとても残念でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画
感想投稿日 : 2017年5月22日
読了日 : 2017年5月22日
本棚登録日 : 2017年5月22日

みんなの感想をみる

コメント 2件

nejidonさんのコメント
2017/05/23

hotaruさん、感動が伝わってくるとても素敵なレビューです!
ⅡとⅢを、それはそれは心待ちにしておりました。
そして、あれこれ懐かしく思い出しながら読ませていただきました。
このお話の原案は、なんと「カラマゾフの兄弟」なのだそうですよ。
だからあんなに重厚な作品になったのでしょうね。
撮影も音楽も脚本も、何より俳優さんたちの演技も、何もかもがトップクラスの作品だと思います。
(思い出しましたが、カラマゾフの兄弟を初めて読んだ時、登場人物をノートに書きだしながら読みました・笑)
余談ですが、可憐な花嫁さんだったコニーがⅢでは加害者側になりますよね。
その時のツールが「カンノーリ」というお菓子ですが、ワタクシたまにあれを作ります。
この映画の世界に憧れて作るようになりました。
材料が全部そろわないので代用品だらけですが、それでもかなり美味しいです。

hotaruさんのコメント
2017/05/23

nejidonさん、こんにちは。
カラマーゾフの兄弟が原案なんですか!?
全く知りませんでしたが、我ながらなんてグットタイミング…。
ヴィトーパパがあまりにもかっこよすぎるためか、全く気がつきませんでした。

でも、そう聴くと、以前教えていただいた、「キリスト教観念」の意味がなんだか理解できるような気がします。
マイケルも誰も、悪事や残酷なことに手を染めながらも、特に矛盾を感じるどころか、心の拠り所的に、十字架をきったり、祈ったりしているんですよね。
あれってそういうことなのかー、と妙に納得しました。彼らの中では、何をしても矛盾なく神を信じてるんだなあ、と。
いい加減な宗教観の私には、目からウロコでした。

あの例のお菓子兵器は、カンノーリというのですね…。初めて知りました。しかも調べたらシチリア伝統菓子…。コッポラ監督、狙ってたんでしょうね、きっと。
ご自身で作るなんて、色々な意味ですごいです!
私はお菓子づくりは苦手なので、今度手に入るところを探してみます^_^

カラマーゾフの兄弟の登場人物の書き出しは、試してみたいと思います。そして、今度こそ完読を…。

色々と教えてくださって、ありがとうございました。
nejidonさんのおかげで、この映画も、カラマーゾフの兄弟の読書も、もっと楽しくなりました。

ツイートする