ファイアースターマン日記 (角川文庫 て 10-2)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年5月25日発売)
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本棚登録 : 84
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「長年叩き込まれた強靭な三高崇拝精神」にがんじがらめのアラサーOLにも「生きているのが恥ずかしい。この世自体が恥ずかしい」ゴスロリJKにも、ファイアースターマンは優しく寄り添い、「勇気づけるコトバで人の心に火をつける」。しかしそんなスーパーヒーロー・ファイアースターマンの実態は失恋と失職にあえぐ人間・マリノであり、「自分だけが辛いって思ったらダメでしょ!」のことばどおり、ファイアースターマン自身がファイアースターマンを必要としている。「辛い状況の人間が、弱っている人間にどこまで勇気を与えられるのか」「他人を励ますことによって、オペレーター自身(=ファイアースターマン)にも何か得るものがあれば」このふたつがファイアースターマンシステムの存在意義であり、つまるところ作品の主題である。(メタファイアースターマン!)そしてこの作品の結末はファイアースターマンとしての活動がうまくいくことにつれてマリノ自身の生活もハッピーな方向へ行く、というもの。まあそんな感じで、「つらいことあっても絶対イイコトあるから元気出してこ~ぜ」的単純なコンセプトと構成だけども、おもしろいのは現代人の悩みとか葛藤のつかみかたが鋭敏なところ。文章自体は文筆が専門じゃないせいか全然洗練されてないけど、だからこそ妙にリアルに感じた。「この世自体が恥ずかしい」とか「跡形もなく消えてしまいたい」とか、これはわたしの話だ!!!と実際ちょっと思ってしまった…。ファイアースターマンの降臨を切に願います。たーすけてー!!!わたしはここだよ!!!「さびしんぼう」のわたしたちへ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ゼロ年代
感想投稿日 : 2010年9月20日
読了日 : 2010年9月20日
本棚登録日 : 2010年9月20日

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