李歐 (講談社文庫)

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著者 : 高村薫
しまうまさん 日本の小説・エッセイ   読み終わった 

本作の主人公は、大阪の大学に籍を置きながら、幼少時に彼が過ごした町の工場で働いていた外国人を訪ねている吉田一彰という青年です。そんなある日、彼が働いている「ナイトゲート」というクラブで殺人事件がおこなわれるという計画があることを聞かされ、しかも一彰がターゲットとなっている陳功という男に電話を取り次ぐ役を引き受けることになります。この事件がきっかけとなって、彼が幼少時に過ごした西淀川の姫里にある旋盤工場の人脈が、東アジアにまたがる闇の世界の一端につながっていたことが少しずつ明らかになっていきます。

一彰は、陳功を殺した李歐という若者に出会います。意気投合した2人は、住之江区平林の倉庫から、笹倉という男の隠し持っていた拳銃を盗み出すという計画を立てます。見事計画を成功させた彼らは再会を約束して別れ、李歐はシンガポールへと旅立っていきます。他方一彰は、盗み出した拳銃を交渉の材料として姫里の工場の再建資金を手にして、工場の再建に努めます。工場長の娘の咲子と結婚して世帯を持つ一方で、彼は李歐との約束をけっして忘れることなく、もう一度彼と会うことを願います。しかし、ひとたび一彰が片脚を突っ込むことになった闇の世界は、簡単に彼がそこから抜け出すことを許してくれません。

月日は流れ、何の因縁か、笹倉と再会することになった一彰は、李歐の現在について教えられた彼は、李歐のもとへ行きたいと願いますが、妻の咲子と息子の耕太を置いて日本を去ることは難しく、2人が約束を実現するにはさらなる年月が必要でした。

大阪の下町とはまた違う湾岸地域独特の雰囲気と、在日コリアンや中国系マフィアの複雑な人脈関係を背景に、主人公の30年に渡る半生を描いたアンチ・ビルドゥングスロマン小説です。読んでいる間、機械の錆びたような空気が胸に這い上がってくるように感じられ、そのハードボイルドな魅力に一気に引き込まれました。

レビュー投稿日
2017年1月2日
読了日
-
本棚登録日
2017年1月2日
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