ウィンター・ホリデー

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年1月24日発売)
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本棚登録 : 1542
感想 : 258
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最終の新幹線で帰る恋人をホームで見送る
昔懐かしい遠距離恋愛の物語より、なんだかよっぽどきゅんきゅんするような。

デビュー作の『青空の卵』シリーズの坂木と鳥井といい、
このハチさん便シリーズの大和と進といい、
坂木司さんは、男女間以外の片想いを描かせると抜群に上手いのです。
といっても、めくるめくBLの世界とかではなくて
『青空の卵』では友人同士、この本ではまだ親子歴数か月の父親と息子なのだけれど。

お互いに相手のことを、これ以上ないくらい深く深く思い遣っている。
読者からすると、「あなた達、立派に両想いなのにどうして気づかないの?!」
とやきもきしてしまうほどに。
なのに、想いが大きすぎて、閉じ込めようとした挙句ぶっきら棒に振舞ってしまったり
自分は相手の重荷になっている、きっといつかは離れていってしまう、と悩んだり。

ハチさん便のドライバーとして働く今も、元ホストの条件反射がたまに出て
お客様に片膝立てて名刺を捧げてしまう、単純だけど気のいい大和。
一緒に過ごした短い夏休みの思い出を宝物のように抱きしめて
冬休みを指折り数えて待っていた、しっかり者だけど繊細な進。
クリスマス、大晦日、お正月、バレンタイン、ホワイトデーと
わくわくするようなイベントに沿って描かれる、父と息子の究極の片想い。
荷物はお客様へとしっかり届けられるのに、
溢れる想いはなかなかうまく届けられない大和が微笑ましくて。

雪が解けてふっくらとした春の大地が現れるように
モコモコした片想いというコートを脱いだら、温かい両想いが顔を出す。
あまりの相思相愛ぶりに、こちらまで照れくさくなってしまうような
可愛らしい父と息子の物語です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: さ行の作家
感想投稿日 : 2013年8月21日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年8月11日

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コメント 2件

nobo0803さんのコメント
2013/08/25

まろんさん

こんにちは♫
お久しぶりです。冠婚葬祭ラッシュッでお忙しくされててしばらくレビューを拝見しないなぁと思っていたのですが・・
体調を崩されていたのでしょうか??
最近は今までのようにたくさんのレビューを書かれていて、元気にしているんだなぁとほっとしています。
私の方も、なんなんでしょうこのあまりの暑さに本を読む気力を奪われたようで、活字を追うのが億劫になってました(>_<)元気にはしてるんですけどね・・

ウィンターホリデーお手元に届いたのですね♫
坂木さん、そうですね!彼が書く男女間以外の片思い素敵ですよね。もう~!!っとこんなに分かり合ってるのに!!ってもどかしくなることがよくありますね(#^^#)
大和と進むもこれ以上ないってほどお互いのことをおもっているのに素直になれず、空回りしているところがもどかしくもあり、微笑ましく感じます。

まろんさんのコメント
2013/08/26

noboさん☆

おひさしぶりです♪
心配してくださって、ほんとにありがとうございます。
冠婚葬祭ラッシュのあと、ご想像通り、
ひ弱な私は疲れに夏バテが重なって、くた~っとなっておりました。
でも、レビューは書けなくても、家事がおろそかになっても
本はコソコソ読んでいたので、読みためてしまった本のレビューを
今、必死になって書いているところだったりします(・_・;)

『ウィンター・ホリデー』、大和と進の片想いぶりが、相変わらず可愛らしいですよね♪
大和は今回、やがては大人になって、手を離れていく進を思い描いていたけれど
ファンとしては、もう少しあのふたりのアツアツぶりを見ていたいなぁ、
坂木さん、もう1作くらい続けてくれないかなぁ・・・
なんて思ってしまいますよね(*'-')フフ♪

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