全作品読破を目指して読みふけっている原田マハさんの本。
次はどれにしようかな?と検索していて
うん?『まぐだら屋のマリア』? マグダラのマリアじゃなくて?
と不思議に思いながら手に取ったのです。
そうか、なるほどそういう仕組みだったのね!
昔はクリスマスが近づくと、キリストに纏わる映画がテレビで放映されたものでした。
その中でも、民衆に石を投げつけられるほど罪深い女性だったのに
キリストに罪を赦され、敬虔な信者として彼の死と復活を見守ったマグダラのマリアは、
幼かった私には特に印象的な存在で。
尽果というバス停でバスを降りてとぼとぼと歩いた先、
海に今にも身を投げるかのような風情で建っている食事処、まぐだら屋。
そこに流れ着くよそ者や、工場で派遣労働者として働く男たちのため
一食700円の定食にも一葉のもみじを添えて、心尽くしの料理を作るマリア。
すっぱりと切り取られた彼女の薬指には、
家族に恵まれず、救いの手を差し伸べてくれた人と
道ならぬ恋に落ちて背負った罪が深く刻まれている。
自分の罪と向き合いながら、同じように罪を犯して苦しむ人たちを受け止め、癒し、
新しい生へと送り出す姿に、マグダラのマリアのイメージがぴったりと重なります。
紫紋(シモン)・丸狐(マルコ)・桐江(キリエ)・予羽(ヨハネ)など
キリスト教の聖人や祈りの言葉から名付けられた登場人物も
もともとの逸話を思い起こしながら読むと、さらなる感動が得られるかも。
生きてゆく中で、何ひとつ罪を犯さずに済む人なんかいない。
赦し、赦されてつつしみ深く生きるすべての人を
やわらかく見守るかのような一冊です。
- 感想投稿日 : 2013年5月16日
- 読了日 : 2013年5月12日
- 本棚登録日 : 2013年5月16日
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