騎手の一分 競馬界の真実 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2013年5月20日発売)
3.63
  • (4)
  • (3)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 40
感想 : 8
5

普段から見ているブログで書かれたレビューで気になって購入。で、購入したその日のうちに一気読みしてしまった。藤田伸二が好きだってのもあるけどね。

トップジョッキー(と言ってもここ数年は去年はかなり成績が落ち込んだが)の藤田伸二が、騎手の立場から見た競馬会の問題点を指摘した内容。

あくまで騎手の目線で書かれている内容なので、これが全てとは言わないし、思わない。調教師には調教師の、調教助手には調教助手の、馬主には馬主の、JRAにはJRAの目線があるだろうし、それぞれの立場ごとに正義と正しさがあるはずで、外野としてはそれを全て踏まえた上での判断をするべきだと思うし。

でも騎手が自分の立場で問題点を実名を上げて指摘しまくったというのは、非常に評価できる一冊だと思う。これでますます藤田の騎乗は少なくなるだろう。正直、今まで評価してくれてた調教師や馬主も、支持しづらくなるんちゃうかな。

それだけ騎手という立場に未練も固執もないってことなんだろうと思うけど。だからこそここまで書けたんだろうし。

確かにルールを作っているJRAが一番悪いのは事実だと思う。でもJRAが全て悪いってのもちょっと暴論かな、と。馬主が自分の利益を最大化するために独占化を進めていったことも問題だろうし(社台グループとかね)、馬にダメージを与えたり他馬を邪魔するような騎乗をするジョッキーを重用する調教師も問題だろうし、馬や他者に被害を与えても勝てばいいという騎乗を重ねるジョッキーも問題だろうし、色んな所に問題があると思う。

それでもまあJRAがルールを改正することで変わる部分も多いだろうね。そこが一番影響が大きいだろうし。

ただ、一番の問題は、最終章で指摘しているように、「競馬界に魅力がない」ことだろうな、と。夢がない、という言い方もアリかもしれない。

短絡的な観客動員数を目当てにしてギャンブル性を高めていったことも問題だろうし、武豊のようなスタージョッキーがいなくなったこともあるだろうし、スターホースがいなくなったこともあるだろう。

JRAはもっと中長期的に仕組みや組織を考えていくべきなんじゃないかな、と思う。競馬ファンとして、そこは考えてほしいな。

そして藤田伸二が本書で指摘しているように、日本人の若手がもっと伸びてくる、チャンスを与えられる環境を整え、成長を促していくことが大事だと思う。それこそが、最終的には競馬の人気につながるのだから。

所詮ギャンブル、で終わらせるのか、単なるギャンブルで終わらせないのか、これからの数年にかかってるだろうなぁ。このままだと競輪、競艇、オートレースのように『単なる公営ギャンブル』としか見なされなくなるよ。本当にそれでいいのか?JRAはそれを望んでいるのか?

個人的には、ここ最近の「かつてのトップジョッキー」の騎乗数減少や勝鞍の減少の理由の一端が分かってスッキリした。浜中俊(ごとき)がリーディングになった理由もね。

そして、ここ数年、某有名冠名を持つ馬に武豊が騎乗していないことに、違和感を覚えていたんだけど、その謎も解消されて、スッキリした。それだけでも僕にとっては読む価値があったわ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2013年6月9日
読了日 : 2013年6月9日
本棚登録日 : 2013年6月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする