know

著者 :
  • 早川書房 (2013年7月25日発売)
3.95
  • (34)
  • (49)
  • (30)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 346
感想 : 40
4

以前、佐々木俊尚氏の本で紹介されていた小説。すぐにKindleで購入したものの、読むのが延び延びになって、今調べたら、買ってから2年以上経ってた。。。

で、本日読み始めて一気読み。めっさ面白い。ホンマに読んで損はしない一冊。

本書に出てくる「電子葉」の世界は、間違いなく近い将来に出てくるだろうと思う。そこに至るまでの過程としてのGoogle Glassであり、コンタクト型ウェアラブルであり、Apple Watchであると思う。

ただまぁ、一足飛びにそこまでは行かないだろうし、倫理的な問題なども大きく出てくるだろうから、それなりの時間をかけてゆっくりと変化していくと思う。が、ここに書かれているような世界は実現するんじゃないかな、と思う。

そうなった時、果たして世界はどのように変わるのか。現在以上に格差社会が強化されるんじゃないか、と僕は思う。本書に書かれているのはかなり楽観的な未来であり、この世界が実現されるとはちょっと考えにくい。それよりも格差がどんどん開き続け、今よりも特権階級とそれ以下の差が大きくなっていく一方で、支配者層の非支配者層に対する偽装はより巧妙さを増して、非支配者層は支配されている事に気づかない、そういう状態が作られるんじゃないかな、と考えている。

そして最後に出てくる「全ての情報がフラットな状態」は、確かに究極の理想の世界であり、これが完成すればイジメも国家も争いもほぼ無くなる、と言うか、そういうことをやる意味が無くなるんじゃないか、と感じる。そういう世界になって欲しいと思うが、人間が人間である以上、そういう世界はやってこないだろうな、とも思う。

可能性があるとしたら、電子葉が実現される前にやってくるであろう(と僕が信じる)人間が労働しなくても良い世界において、一部の大天才が半ば無理矢理にそういう世界に変えていく、という方向性だろうか。本当に人間が「生きるための労働」から開放される時が来たら、更に高次元なことを考える人は出てくるだろうし、そこに大いなる未来があるだろうな。

本書を読みながら、そんなことを考えた。

量子葉とはすなわち、量子コンピュータを頭に埋め込んで、ネット環境からあらゆる情報を吸い出せる状態のことだと言えるだろう。そんな状態になったら、本当に人間の脳は耐えられるのか。処理しきれるのか。そう思うけど、でもそこにはもの凄い魅力があり、僕はその欲求に耐える自信はない。仮に入れられるチャンスがあるとしたら、間違いなく僕は入れると思う。

そんな欲求の究極の存在が道終知ルであり、まさに『朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり』を体現した存在なんだろうな。名前も間違いなくそこから来てるだろうし。

ただ単に「知りたい」と思うこと、知識に対する欲求を持ち続けること、それを全面肯定してくれる一冊。読んでて気持ちよかった。

星5つでも良かったのだが、そこまで知識が広がっていたら、人間が死なない方法、生き続ける方法なんかも見つけられたのではないか、あるいはもっと寿命が長くなっていたのではないか、ということだったり、ちょっと理想的すぎるかな、と思ったので、4つにしといた。が、稀有な一冊であることは間違いない。

「死んだ後のことなんて、子供でも知ってるよ」と言えた時、人間はどう変わるのだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年5月1日
読了日 : 2016年5月1日
本棚登録日 : 2016年5月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする