内容(「BOOK」データベースより)
猫は戻り、涸れた井戸に水が溢れ、綿谷昇との対決が迫る。壮烈な終焉を迎える完結編。
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おおお。
「壮烈な終焉」とな。
でもここの主人公はかっこいい!です。
今までの村上春樹作品にはない前向きさ!
「僕の考えていることが本当に正しいかどうか、わからない。でもこの場所にいる僕はそれに勝たなくてはならない。これは僕にとっての戦争なのだ。「今度はどこにも逃げないよ」と僕はクミコに言った。「僕は君を連れて帰る」僕はグラスを下に置き、毛糸の帽子を頭にかぶり、脚にはさんでいたバットを手に取った。そしてゆっくりとドアに向かった。」
どうですか!
奥様を取り戻すために巨悪に立ち向かうその姿!
いやぁ、かっこいいですよ...
女子が一度はあこがれるシチュですよ...
意に背いて引き裂かれる二人。
取り戻しに来る恋人。
自分のために戦おうとしてくれる...
はう。素敵だわ。
今までの村上作品でこんな男性がはたしていたでしょうか!?
...って言うか「国境の西」は一体どこに挿入されるはずだったんでしょう...
奥様が失踪する前?
自分にもこんなエピソードがあったんだよ~みたいな?
うーん...
いらないね、確かに(笑
それあったら主人公のかっこよさだいぶ目減りするわ。
最後のこの作品では、多分に政治的な内容が含まれている気がします。
綿谷昇に象徴される、メディアとの関係。
間宮中尉、「クロニクル」、ナツメグの過去に現れる
戦争の記憶。
重く苦しい時代の閉塞感、というものは共通しているのかも知れません。
何かとてつもなく大きなものに流されている...
そしてそれはもしかしたら強大な「悪」かもしれない...
村上春樹はこの作品を通して、本当はもっと大きなものを伝えたかったのかも知れないですね。
忘れてはいけない過去。
誰にとってもつらく、苦しいことしかなかった時代...
享楽の60-70年代を経て、この作品にたどり着いたのかな...と思うと、何か深い深いものを感じます。
で、そんな重ーい話が続く中、主人公には届かない笠原メイの手紙が現実を思い出させ、ほっとさせてくれます。
彼女はこの「巨悪」に関わらず、興味を持たず、
淡々と、でも人間らしい生活を送る唯一の人物に見えます。
もちろん彼女も重い過去を持った人物ではあるのですが...
ここでは「救い」の役割を果たしているように見えますね。
あ、でも、井戸に閉じ込めたりするツンデレですがw
ほかの女性たちのように病んではいない感じ。
綿谷昇と主人公は、精神世界で対決を果たします。
そしてその勝負の行方は...
奥様の決断は...?
あ、小さな声で、良いニュースを。
「猫が帰ってきましたよ...」
- 感想投稿日 : 2015年6月26日
- 読了日 : 2015年6月26日
- 本棚登録日 : 2015年6月23日
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