ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1997年9月30日発売)
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内容(「BOOK」データベースより)
猫は戻り、涸れた井戸に水が溢れ、綿谷昇との対決が迫る。壮烈な終焉を迎える完結編。

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おおお。
「壮烈な終焉」とな。

でもここの主人公はかっこいい!です。
今までの村上春樹作品にはない前向きさ!

「僕の考えていることが本当に正しいかどうか、わからない。でもこの場所にいる僕はそれに勝たなくてはならない。これは僕にとっての戦争なのだ。「今度はどこにも逃げないよ」と僕はクミコに言った。「僕は君を連れて帰る」僕はグラスを下に置き、毛糸の帽子を頭にかぶり、脚にはさんでいたバットを手に取った。そしてゆっくりとドアに向かった。」

どうですか!
奥様を取り戻すために巨悪に立ち向かうその姿!

いやぁ、かっこいいですよ...
女子が一度はあこがれるシチュですよ...
意に背いて引き裂かれる二人。
取り戻しに来る恋人。
自分のために戦おうとしてくれる...

はう。素敵だわ。

今までの村上作品でこんな男性がはたしていたでしょうか!?

...って言うか「国境の西」は一体どこに挿入されるはずだったんでしょう...
奥様が失踪する前?
自分にもこんなエピソードがあったんだよ~みたいな?

うーん...
いらないね、確かに(笑
それあったら主人公のかっこよさだいぶ目減りするわ。

最後のこの作品では、多分に政治的な内容が含まれている気がします。

綿谷昇に象徴される、メディアとの関係。
間宮中尉、「クロニクル」、ナツメグの過去に現れる
戦争の記憶。

重く苦しい時代の閉塞感、というものは共通しているのかも知れません。

何かとてつもなく大きなものに流されている...
そしてそれはもしかしたら強大な「悪」かもしれない...

村上春樹はこの作品を通して、本当はもっと大きなものを伝えたかったのかも知れないですね。

忘れてはいけない過去。
誰にとってもつらく、苦しいことしかなかった時代...

享楽の60-70年代を経て、この作品にたどり着いたのかな...と思うと、何か深い深いものを感じます。

で、そんな重ーい話が続く中、主人公には届かない笠原メイの手紙が現実を思い出させ、ほっとさせてくれます。

彼女はこの「巨悪」に関わらず、興味を持たず、
淡々と、でも人間らしい生活を送る唯一の人物に見えます。

もちろん彼女も重い過去を持った人物ではあるのですが...
ここでは「救い」の役割を果たしているように見えますね。

あ、でも、井戸に閉じ込めたりするツンデレですがw
ほかの女性たちのように病んではいない感じ。

綿谷昇と主人公は、精神世界で対決を果たします。
そしてその勝負の行方は...
奥様の決断は...?

あ、小さな声で、良いニュースを。
「猫が帰ってきましたよ...」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 村上春樹
感想投稿日 : 2015年6月26日
読了日 : 2015年6月26日
本棚登録日 : 2015年6月23日

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