禁色 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1964年5月4日発売)
3.62
  • (131)
  • (190)
  • (342)
  • (21)
  • (2)
本棚登録 : 2211
感想 : 185
4

出版社からのコメント
女を愛することの出来ない同性愛者の美青年を操ることによって、かつて自分を拒んだ女たちに復讐を試みる老作家の悲惨な最期。(Amazonより)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

渋谷区等で、同姓婚が認められて間もないですが、
本当に今はいい時代になったなぁ、と思わずにいられないですね...

先日たまたま機会がありまして、
いわゆる「ゲイとパートナーシップの歴史」みたいな
テーマでのLGBT(で合ってたかな)でのセミナーを
WEBで拝見したことがあるのですよ。

そしたら、そこで見た内容と今回の小説の中での
ゲイ同士の知りあい方やパートナーシップが
本当に同じで、当時の方々の苦労がまざまざと...

・出会いはH公園 とか。
・継続的なパートナーシップは望めなかった とか。
・トイレの落書きが出会いの手段 とか。
・いわゆるハッテン場みたいなものでその場限りだった とか。

←これらはすべて昭和の時代のお話で、
セミナーでは歴史の中で語られている内容でした。

もちろん今はそこまでクローズドなものでもなくて、
いわゆるカミングアウトしている方もたくさんいて、
ちゃんとしたパートナーシップを異性と同様に
築いているカップルもたくさんいて。

この当時だからこその、この小説なのかな、と思った次第。

とは言え、この小説を読んでいると、むしろ鏑木夫人や
悠一に恋して結婚する康子なんかが普通ではなくて、
世間にはゲイであることを隠して結婚し家庭を作る悠一や
その周りのゲイたちの方が普通に思える...

くらいの思い入れのある書きっぷり。

ゲイさんたちが本当に老いも若きも生き生きと、
クローズドながらもとにかく人生を楽しんでいるのですよ。

相手を変えての逢瀬や、三角・四角・それ以上の関係によるもめごと、
優越感、嫉妬、独占欲。

いろんな欲望をあらわにしながら、みずみずしくさえ感じられる....

事あるごとに悠一の美しさが強調されるので、
どんな人かな~と勝手に想像してるのですが
そこはやっぱり三島本人が投影されているのかな?

でもその悠一を逆美人局に使う老境の作家、檜俊輔
(こっちがほんとの主人公)にも三島自身の姿が
投影されているようにも思える。

彼の中にあるたくさんの人格や思いやあこがれや禁忌や、
いろんなものがつまった作品なのだろうと...

最後は悲劇と聞いていましたが...
私はこの結末に納得は出来ないですね (-"-;)

Wikipediaにも書いてあるんでネタばれでもないんでしょうけど、
最後悠一だけいいとこ取りでないかい?

遺産まで残すことないんでないかい?

そりゃー、俊輔も悠一に惚れていたからとは言え、ねぇ。
ダメよ、悠一さんは小悪魔よ!きぃー!
(って誰)

にしても、同性愛(漢字合ってる?)よりも異性との不倫の方がまだまし、
ってなっちゃう嫁と母親の錯乱ぶりは突っ込みどころ満載。

思わず息子の不倫相手(嘘だけど)に「よろしくお願いします」って
頭まで下げちゃうお母さんがゲシュタルト崩壊しちゃってていじらしい...

昭和当時の風俗論としても、非常に有用な作品ではないでしょうか!

にしても...今日までのように同性愛やいろんな愛の形が認められる世の中を、
三島が見たらどう描くのか、それはそれでとても興味がありますなぁ。

長生きしてほしかったですね...(´ω`*)

三島は同性愛だけじゃないって?
そうでしたそうでした(苦笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年7月14日
読了日 : 2015年7月14日
本棚登録日 : 2015年6月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする