戦力外通告 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年5月14日発売)
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55歳。
人生の通知表を考える年代。

主人公はリストラされた55歳。
お金に困るわけでもなく、
時間だけが豊富にある。
クラス会で再開した
旧友の悩み相談に乗り
かつての憧れの女性と近くなって行く。

55歳は中途半端な年齢だ。
主人公はこう感慨する。
「ゴールはかすかにだが見えている。
 しかし、あとふたつも三つも
 山を登り下りしなければ
 ゴールには辿り着かない」

思うならば、人生の通知表がそろそろ出そうな年代。
自分の人生はどうだったのか、
現実にも足を取られながらも
人生の総決算を意識する年代。

通知表の評価項目は何だろうか。

資産。恋愛。生きがい。

他人からどう見られるか。
自分がどこまで満足しているか。
他者志向だったり、自己志向だったり。

家とか、車とか、家族とか、お墓とか、
別荘とか、見た目とか、社会的地位とか。

そんなふうに他者評価と自己評価の間を揺れ動き
今をもがき続ける。
まだまだ先は長い。そんな年代。

主人公は幼なじみと恋愛をする。
それは“昔の恋”。
火がつくが、やはり長続きはしない。
それは“昔の恋”だから。

そして、妻との関係。
それは“今の問題”。
妻は働き始め
新しい恋を得ている。
しかし、どこへ行こうとしているのか
そこがわからない。

さらに将来への思い。
主人公はその日その日を生きて
しかし、自分のゴールを
意識せざるを得ない。
それは“明日の通知表”。

そんな昨日、今日、明日を生きながら
主人公は再び会社に復帰する。
クラス会のメンバーの問題にともに悩み傷つきながらも
“明日の通知表”を目指して。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2011年7月21日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年7月21日

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