昨日までの暮らしは、明日からも続くはずだった、それを不意に断ち切る、愛するひとの死-生と死と、幸せの意味を見つめる最新連作短編集(文藝春秋刊)。最近ちょと意に染まない作品が多かったけれど、久しぶりの重松ワールド、堪能できます。男と女が出会い、夫婦になり、家族をつくって、それで幸せな一生なのか?消えゆく命の前で、妻を静かに見送る父と子 (;O;)ガンに侵され、余命を告げられ、死に直面した人々の悲しくも、確実にやってくるその日まで、そしてその日のあと...主人公を微妙にずらしながら、表題作『その日のまえに』へと繋がり、溶け込み、そしてひとつの大きな物語になっていきます。死に逝く本人、看取る者の気持ちの両方が痛烈に心の琴線に触れ、思わず自分と重ねてしまう、死を受け入れるという事は、その瞬間だけでなく、その前にも、その後にも永遠に繋がっているのだという、厳然たる事実を痛感させられます。いずれはやってくる大切な人の、そして自分自身の『その日のまえに』、どう生き、何をしなければいけないのか?生きている事の素晴らしさ、命あることの尊さ、何が大切なのかを改めて問い直す、強いメッセージを持った本です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年5月8日
- 読了日 : 2005年10月25日
- 本棚登録日 : 2016年5月5日
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