熱心な欧州サッカーファンなら、東欧の旧共産圏のクラブには、「ディナモ」という名を冠したクラブが多数存在していることに気付くだろう。ディナモ・キエフ、ディナモ・ザグレブ、ディナモ・ブカレスト、ディナモ・トビリシ…。
「ディナモ」とは、英語でのダイナミック(動的)を意味し、「スポーツクラブ」のことを指す言葉とされるが、旧ソ連のディナモ・モスクワが、秘密警察が運営をサポートするクラブであったことから「ディナモ」といえば秘密警察系のクラブと認識されるようになったという。上記クラブも例外ではない。これらのクラブは、旧ソ連時代、ひときわ強さを誇ったクラブであった。
また、秘密警察系のクラブであったことから、それは「権力」と同一視されるものであり「憎悪」の対象となり得た点も見逃せない。89年の冷戦終結後、ほとんどの「ディナモ」は、クラブの名称変更を余儀なくされることになるが、結局はもとの「ディナモ」という名称にもどっている。それは他ならぬサポーター自身の要望、過去の栄光への「憧憬」からである。
この「憎悪」と「憧憬」を含みもつ「ディナモ」という言葉。本書は、この「ディナモ」を巡っての取材を通してまとめられたルポルタージュであるが、単にサッカーの域を超えており、社会・政治との関わりの中でサッカーをとらえた非常に興味深い作品といえる。
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- 感想投稿日 : 2011年10月5日
- 本棚登録日 : 2011年10月3日
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