小さいころ、外食といえばファミレスくらいしかなかったし、学生時代もチェーン店には大変お世話になった。そして今も、結構お世話になっている。気取りのないタイトルに親近感をおぼえて一気に読んだ。
著者の村瀬さんとは同い年だけあり、感覚が似ている。日本上陸して間もないマクドナルドに初めて行ったとき、私もアップルパイを食べて「この世にこんな美味しいものがあったのか!」なんて感動したものだった。関東ではよく行ったけど広島にはないお店もたくさんあり、なんだかすごく懐かしかった。鳥良とかフォルクスとかビリーザキッドとか。どれも大好きだったなぁ。
切れのいい文章でたたみかけるように笑わせてくれるのだけど、「ファミール」の章だけはちょっとちがった。お父様が末期の肺癌と宣告された病院の帰りに、村瀬さんは昔家族でよく来た「ファミール」に寄る。昔、"飛び上がるほどウマいと感じた"ハンバーグがそれほどでもない。
"本当に何もわかっていなかったのは俺の方だった。
父と母と妹と自分。家族が揃ってメシを食べられたことが、今となってはどれだけ貴重な時間だったのかと思い知らされる"
私はこの章を、福島の実家で両親や妹と久々にゆっくり過ごした後、帰りの新幹線で読んだ。村瀬さんの言葉が、強い実感として体の中に流れ込んできた。何を食べるかより、誰と食べてどんな時間を過ごすか。そういうものをひっくるめて味の記憶がかたちづくられるんだろうな。
続編も出るようなので、楽しみに待っています。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ・その他
- 感想投稿日 : 2016年8月16日
- 読了日 : 2016年8月16日
- 本棚登録日 : 2016年8月9日
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