NHK取材班・北博昭『戦場の軍法会議 日本兵はなぜ処刑されたのか』NHK出版。海軍法務官から資料や日記を託された北博昭氏の協力で本書は、これまで殆ど明らかにされなかった戦場の軍法会議の実像を明らかにする。戦争末期、士気の低下と食糧不足は相次ぐ逃亡を招くが、いずれも極刑をもって見せしめとされた。
例えば…。飢餓での戦線離脱は最大7年以下の懲役で死刑には当たらない。しかし手続きを変え、死刑が適用される(「奔敵未遂」)。また特攻の強要もたび重ねられたという。前線で兵隊の数が減ることは本来不利な筈なのに、軍法会議関係者はそれを「口減らし」ととらえた。
本書は法の正義が形骸化していた事実を明らかにする。無謀な作戦の責任を取らない軍と高級将校。その責任を末端の兵士に転化する法務官…。軍と司法の歪んだ癒着関係は、戦後日本の体質にも継承されている。戦後裁判官に転じた人間は多いという。
初めて公開された各種文書、そして関係者への丹念な聞き取り調査から、戦時下日本における陸海軍の軍法会議の欺瞞のメカニズムを明らかにする労作。戦争の根源的な矛盾を説得力を持って示す一冊といえよう。
※番組を見ていないのが残念。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
第二次世界大戦
- 感想投稿日 : 2013年9月11日
- 読了日 : 2013年9月11日
- 本棚登録日 : 2013年9月11日
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