中学生時代には、宮崎駿作品の中ではかなり好きなほうだったのですが、それから10年以上経過してみると、宮崎作品の中では、これはけっこう監督の黒歴史的な作品なのではないか、という気もしてきます。
中学生当時、この作品が気に入っていたのはジーナの歌声が案外に低かったから、というのがあります。中学生の感性では、ヒロインと言うのは高い声でしゃべり、高い声で歌うものでした。少女こそヒロインと思っていました。本作はその意味で、大人の女性もヒロインになりうるのだ、と示してくれた映画でした。その衝撃が、宮崎作品の中でもかなり好きな部類に入る、という印象を形成したのですね。
二十代も後半になると、低い声の大人の女どころか、おばあさんでもヒロインになりうることを、同じ宮崎監督の作品で言えば『ハウルの動く城』、それも度外視して考えるならば『ラベンダーの咲く庭で』などで充分に学んでいるのですが、それゆえにどうしても、大人の女に関する衝撃を抜き去って映画を評価するようになります。結果、本作は宮崎作品の中でも不用意に宮崎監督の若い部分を出してしまった映画である、という評価になるのですね。大人の世界があるのだと知らしめてくれた映画を、未熟な映画だと評価せざるを得ない。そういうところはさみしくもあり、けれども、やっぱりこのジーナの歌声は良いと思うのです。そしてジーナが、本作でも若く勝気な少女と対比される位置に置かれるのを、残酷にも思うのです。
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- 感想投稿日 : 2017年2月20日
- 読了日 : 2015年2月20日
- 本棚登録日 : 2017年2月20日
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