オデッサ・ファイル [DVD]

監督 : ロナルド・ニーム 
出演 : ジョン・ボイト  マキシミリアン・シェル  メアリー・タム  デレク・ヤコビ 
  • ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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本棚登録 : 36
感想 : 11
3

原作が読みたい!!

フレデリック・フォーサイスは短編集しか読んだことがないのですが、これ尺の都合で映画版は絶対、小説版より主人公がポンコツ仕様だと思うんですよね……違うのかな……

ナチスの残党の物語と言うのは星の数ほど生み出されていると思うのですけど、本作はその中でも、人道的な問題に踏み込みつつも、王道の人道的な問題には踏み込まない。むしろドイツ人同士の問題としてストーリーを終えるところ、そしてドイツ人同士の問題であれば差別主義者の心も動いてしまうところ、この描写はクールですらあります。ドイツ人同士の問題に重ねて、当然、結末ではユダヤ人の問題も自殺した老人の日記と、友人による彼の追悼を通して触れられるのですが、なにぶん直前にドイツ人同士の問題を挟みますから、悩みますよね、ドイツ人同士にも問題はあったのだ、と受け止めればよいのか、ユダヤ人と共にドイツ人も苦しみを味わったのだ、と取ればよいのか。どちらに受け止めても大意は違わないのですけど、作品の温度が少し違って感じられます。

ユダヤ人の問題に関しては、ナチスの残党の理解は得られない、そしてその思想的な偏りは、世代を重ねることによってしか是正されていかないというシビアな価値観も同時に提示されますから、その対話や更生の不可能性に対する無力感も、このクールな印象を強めています。

主人公が妙に血気盛んになるところは、いまいち理解できんなあ、と思いながら見ていたのですが、この理由は映画終了の直前になって発覚しますから、ちょっと中盤では我慢が必要ですね。私のように気短な人間だと、なんでこんな乗り気なの?? 私なにか見落としたんだろうか??? なんか大事なシーンあったかな??? と考え込んで巻き戻して見直したりしてしまいますので、何はともあれ先へ先へ見進めていくべき映画でしたね。

ドイツ人同士の問題であることが発覚した瞬間、悪役の態度が軟化したり人間味を帯びてきたりするところは本作の見どころのひとつですが、まあ後味は悪いですよね。人間だれでも多かれ少なかれそういうところがあって、リアルと言えばリアルなのですけど。人間の敵と味方の切り分けの範囲という空間的な問題、それから世代と言う時間的な問題、その断絶が重複する場所としての主人公の立ち位置、そういう描き方に体感温度が下がっていく作品でした。原作読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会派
感想投稿日 : 2017年2月9日
読了日 : 2017年2月9日
本棚登録日 : 2017年2月9日

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