ハンサム・ガール (フォア文庫 C 143)

著者 :
  • 理論社 (1998年7月1日発売)
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感想 : 10
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柳二葉は、女の子。元プロ野球選手の父に鍛えられ、コントロール抜群のサウスポーに育った。念願かなって、同じマンションに住む塩見守がエースの、憧れの少年野球チーム『アリゲーターズ』に入ることができたのだが……。

二葉の父は、元横浜ベイスターズの二軍選手で、現在は専業主夫。メガネの似合うハンサムで、子供の世話に天才的な才能を発揮している。ママはバリバリのキャリア・ウーマンで、大阪に単身赴任中。そして15歳の晶子姉がいる。

二葉には、とっても大きな悩みがある。やっと入れた『アリゲーターズ』で投げたいけれど、今までのように楽しく投げられないこと。そして、パパが専業主夫でママが外で働いているという逆転夫婦だということ。

読みながら、腹が立ってしょうがなかった。二葉を、女だからというだけでその実力を認めようとしない男の子たちに。でもねぇ、現実はきっと今でもこうなんだろうな、と思えてしまう哀しさもあったりして。

そして、そんな二葉は一方で、<朝、会社に出かけるパパと、夕方ごはんのしたくをするママがほしい>と思っているのだが、両親をそう思ってしまっているようでは、二葉が女だからという理由で受けている差別的視線を撥ね退けることはできないだろう、とも読みながら思っていた。

それがねぇ、とてもうまい具合に少しずつ解決していくんですよ。それも自然な形で。ここが著者の腕なのですね。大人がどう見守っていくのか、大人同士の関係が子供にどう影響するのか、そして何より、二葉が何をきっかけにしてどうやって乗り越えていくのか、最後まで目が離せなかった。

これは児童書で、理論社の童話パラダイスというシリーズの10巻目だったのをフォア文庫に収めたもの。もともとは、小学館の『小学五年生』に、1991年5月号から1992年3月号までに連載されていたもので、それに加筆して出版したとのこと。

だからけっこう話が飛ぶというか、話の展開が急な部分があって、本当はもうちょっとじっくり読みたいのにさらっと流してしまっているところがあるのは、仕方ないのだろう。

でもパパの魅力は余すところなく伝えている。この作品で好きなキャラクターといえば、パパと答える人がきっと多いだろう。優しくて寛大で冷静で、本当にステキなパパなのだもの。

ただ個人的には、塩見くんもかなりイイと思っている。彼もきっと、二葉のパパのようなステキな男性になるだろうと踏んでいる。(2006.3.27)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2009年7月16日
読了日 : -
本棚登録日 : 2009年7月16日

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