生きて愛するために (中公文庫 つ 3-17)

著者 :
  • 中央公論新社 (1999年10月1日発売)
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本棚登録 : 34
感想 : 8

辻さんの人柄が滲み出ているいいエッセイ集だ。
読むだけで生きることの喜びに溢れてくる素晴らしい本だ。
とりわけ心に響いた文章を書き出してみよう。
「われわれは日常生活のなかであくせくと生きているが、心の目を澄ますとこうした花盛りのなかにいるのが見えてくる。実は、この世にいるだけで、われわれは美しいもの、香しいものに恵まれているのだ。何一つそこに付け加えるものはない。すべめは満たされている、、そう思うと急に、時計の音がゆっくり聞こえてくる。万事がゆったりと動きはじめる。何か幸せな充実感が心の奥のほうから湧き上がってくる。」
「この世に太陽もある。月もある。魂の仲間のような星もある。信じられないようなよきものに満たされている。雲がある。風がある。夏がきて、秋がくる。友達がいる。よき妻や子がいる。頼もしい男がいる。優しい女がいる。うまい酒だってあるではないか。」

聖フランシスのくだりも良い。
詩的高揚の原動力が、彼の絶対的無所有からきているという。自己と物への執着を棄て去ること。
伝記の、聖女クララとの愛の物語にも触れている。読んでみたくなった素敵なシーン。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年3月28日
読了日 : 2017年3月26日
本棚登録日 : 2017年3月20日

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