男と女が入れ替わる「とりかえばや物語」は好きで、他にも読んでいるが、これは結構特殊な状況と「海馬」を取替え移植するという外科的な処理による方法が異色。
記憶を失っていく難病「ジンガメル症候群」(海馬の変化によって生じている)に罹った女性と、末期ガンの男性、58歳。「脳間海馬移植特別措置法」に基づいて、日本で2例目となる移植が行われる。
物語は、32歳の女性の体になった58歳の男性の状況が短介されていく。彼女には、4歳の男の子いて、その子のために「母親としての彼女」を生きてほしい、ということが伝えられている。
「意識」とは何だろう、というのがテーマとしてある。男と女を分けるものは何か。
体と意識が別であるという性同一性障害とも大きく関わってくる。自分が、男である、女である、という意識はどうやって作られていくのか、もしくは生まれた時からあるものなのか。
自分にとっては、そこを問題提起していることが一番面白かった。
とても長いお話は、主人公カノン(歌音)が、そこを突き抜けた自分を見つけ出そうとしているというような所で終わっている。が、とても不満なのは、母親としての存在に悩む59歳の男の意識が前面に出されていて、肉体生理としての女の問題をあっさりと割り切ってクリアしてしまっているような所だ。
男が女になるといった場面で一番興味があり、当人にとっても問題になるであろうこのことは、少しはでてきていて、お連れ合いとのセックスは拒否しているし、匂いの問題として出されている。が、とても中途半端で面白くない。
性欲は「意識」で制御できてしまうのだろうか。
- 感想投稿日 : 2015年3月3日
- 読了日 : 2015年3月3日
- 本棚登録日 : 2015年3月3日
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