葡萄と郷愁

著者 :
  • 光文社 (1986年6月1日発売)
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感想 : 3
5

読み始めは、なんだかわからない。
でも、文章が上手いのでそれなりに読めていくのが、この作者の強みか。
日本とハンガリーの1985年10月17日の一日が交互に語られていく。
日本の主人公は、純子。
自分に求婚している外交官の村井との結婚承諾の返事をする日だった。しかし、彼女には、幼馴染の孝介がいて、一日中迷っている。しかし、弁護士の夢をもっていた彼はその夢を棄てて変わった。しかし、嫌いにはなれない。
ハンガリーの主人公は、アギー。
小さい時に母をなくし、その時から酒飲みで働かなくなってしまった父と暮らしている。心理学者を夢みて勉強しているが、ある日、アメリカの富豪女性と会い気に入られて、養女になってほしいといわれる。そして、この日、返事をすることになっている。
純子は、迷った末に、通っている英語教室の講師である女性に相談する。彼女は、自分の知っている3人の女性の話をする。
そして、偶然、大学の先輩である岡部に会う。彼は、妻と別れ、海外を旅して、帰ってきたところだった。彼と話をする中で、彼女は決めた。
アーギには、ジョルトという恋人がいた。そして、仲間がいた。ハンガリーという国に住むものの誇りがあった。同級生が自殺をして、仲間とともに振り回されるのだが、その中で、彼女の気持ちが固まっていく。
一日の出来事なのだが、彼女らのそれまでの歴史が詰まった一日だ。そして、未来も決める一日だ。それだけに、小さな出来事がとても印象的だ。
そして、どんなに苦しくても、どこかに自分を理解してくれる人が必ずいる。それは、偶然のように見えたとしても必然なんだという作者の思いが何か嬉しい。
ひとりじゃないんだ、という気持ちがわいてくる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年5月7日
読了日 : 2015年5月7日
本棚登録日 : 2015年5月2日

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