風の万里 黎明の空 (上) 十二国記 4 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年3月28日発売)
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またどうしてこの方は、こう人間の汚いところというか嫌なところ描きますかねえ(褒め言葉として)。じぶんに思い当たる節があるから余計に、グサグサ刺さるというか、鬱になるというか。
あと、ラスト。それはないだろう。清秀が可哀そうすぎる。それぞれが葛藤・苦悩するのはまだしも、あの最後は崖につき落とされた気分。しかも「おれ死ぬのやだな」「鈴が泣くから」と言い残し・・・そんな結末ないやろう。
「月の影 影の海」同様、下巻では救われることを望む限り。大丈夫だよねえ?このままどん底は嫌ですよ。

そして陽子は、冒頭からまたしても苦難の道。生死の心配はなくなったけど、今度は政にて。女子高生がいきなり王だと言われてもねえ。それでも逃げずに覚悟を決めた当たりはちょっと感動。「月の影 影の海」のラストシーンに見せた覚悟は本物だった。そして景麒の回想。「かけがえのない方なのだから」という言葉が信頼とこの後の安心感みたいなものを感じ。

さて政と言えば、アルスラーン王子を思い出す。『限られた食料、すべての人は救えない、王たるあなたはどうする』。ひたすらに血を嫌い、哀れみ,仁道を説く麒麟。理想と現実のすり合わせが、十二国にリアリティというかただのファンタジーで終わらないところをもたらしていると思うのですよ。

鈴の不幸自慢を清秀が指摘する。祥瓊の言い訳に楽俊が「あんたは、何をしたんだ?」と問う。ズバズバ本当のことを突かれるとツライもの。
さて、彼女たちは「童話物語」の下巻のペチカのように改心(というと語弊があるが)するのだろうか。そして、陽子と鈴と祥瓊の3人の出会いがどうなることか。陽子の初勅は何かな。

珠晶、見たなりは小さいのに、そこまでできた王道を歩むとはいったい何があった?どういう経緯で供王になったのか。語られることはないのかなあ。
「哀れみが真っ当に正直に生きている人たちへの侮辱である」と言い切るのは凄い。王ならばこその巨視的視点。奚(下女)の長への感謝の言葉なんて、とても想像できなかった。ここら辺が人心掌握の技というか、上に立つものの思考なんだろうなあ。

さて、延王尚隆の「そうなればきっと、俺は雁を滅ぼしてみたくなる」と不穏な独白。前巻にも微妙な一文があったが。いずれどこかでそんな物語が出てくるのか。

遠甫との単位の話、どっかに図解ないですかね。文字だけではいっかな頭に入らない・・・

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年7月28日
読了日 : 2013年7月23日
本棚登録日 : 2013年7月28日

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