箱庭図書館

著者 :
  • 集英社 (2011年3月25日発売)
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本棚登録 : 4281
感想 : 605
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図書館で何気なく手を取り、『小説家のつくり方』の冒頭でエッセイ集なのかと勘違いして読んだ。違った。でも、勘違いしたときに期待した「普段と違う乙一作品が読めるかも」は半分当たって半分外れた。そんな感じ。
読者のボツ作を応募してもらってそれをリメイクするっていう企画の趣旨が面白い。あとがきで原作がどのような作品だったか、どんな点が良かったか、どう捉えてどんな狙いでリメイクしようと思ったかの解説があるのがまた面白い。
『青春絶縁体』に挟み込まれる作中作の青臭いリアルさがあとがきを読むとああなるほどって思う由来だったり、これまで読んだ乙一作品とは台詞回しが少し違う雰囲気だったりして、この企画ならではの“遊び”が随所に盛り込まれているのが良い。

一番好きなのは『王国の旗』。
作者があとがきで述べている通り普段の作風とは違った雰囲気。自分はこういった世界観でこんな落とし所になる作品は割りと好きなので、それを乙一さんの筆致で表すとこうなるんだと思った。それを抜きにしても、根底に漂うどうしようもなさ、やるせなさ、切なさの合間に漂うほんの少しのいい加減さ。好き。
『青春絶縁体』はただただ単純に面白い。あと主人公の同類として学生時代を過ごしたものとしては胸に刺さる。
『ホワイト・ステップ』は普段の作者が書きそうな雰囲気だから一度は選考から外したものの、アイデアの秀逸さに取り上げざるを得なかったというあとがきに納得する。読んでいて一番引き込まれたのはこの作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般_文芸
感想投稿日 : 2016年10月8日
読了日 : 2016年10月8日
本棚登録日 : 2016年10月8日

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