蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1968年11月19日発売)
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感想 : 510

「蜘蛛の糸」をはじめ、雑誌「赤い鳥」に掲載された作品を中心とした短篇集。そのいずれもが、まだ20代の芥川初期のものだが、小説作法、構築性において既に極めて完成度が高い。主題との関連でいうなら、注目すべきは「杜子春」だろう。杜子春の仙界入りの試練において、とうとう最後の「愛」に彼は屈してしまう。仏教においても、道教においても「愛」は愛執、愛着に見られるように断ち切るべき迷妄であった。「愛」を価値あるものとするのは、まさしく近代的な価値観にほかならず、芥川のなしたのは、まさにそうした価値の転換だったのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆日本文学
感想投稿日 : 2013年9月25日
読了日 : 2013年2月6日
本棚登録日 : 2013年9月25日

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