やくざと日本人 (ちくま文庫 い 45-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (1999年6月1日発売)
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感想 : 8
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諸外国では、下層階級の生活のために犯罪が横行しているのが普通だが、我が国は都市で夜道を一人で歩かれるほど安全な国である。

また日本人の誠実さ、正直さは、時に外国人には驚きを持って迎えられる。

我が国の「表社会」がこれほど平和な清廉さを保てるのは、ダークな部分が裏社会として自己完結的に存在し、表社会からの経済的搾取をある特定のチャネルを通じてのみ行ってきているからのように思われる。

ヤクザが利益団体として義侠の精神によって結束するさまは神道や儒教道徳が背景にあるようで、これまた日本的(東洋的)だ。このような真面目で自己犠牲的な結束の仕方は、人種混交の他の文化圏では類を見ない。

本書の初版から40年、プロローグが書かれてから20年が過ぎているので、現況や今後も知りたいところだ。

ヤクザが仮に制圧されても、どのような社会でも、貧困、虐げられる下層階級が世の中から消えることはない。これはアメリカでも日本でもロシアでも中国でも、どこでも同じことだ。

日本の下層階級は、これからどんなシノギ方をしていくのだろう。日本の将来を考えるなら、表社会のことだけでなく、そのことも考えておくべきだろう。

見ないように、関わらないようにしただけでは、解決にはならないだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年8月26日
読了日 : 2015年8月26日
本棚登録日 : 2015年6月18日

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