色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年4月12日発売)
3.63
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本棚登録 : 16462
感想 : 2398
5

村上春樹の作品はほとんど読んでいるが、ハルキストを名乗るほどの熱狂的なファンでもない。
それでもやはり新作が出ると聞きつけると心が浮き立つ。
1Q84からの巷のお祭り騒ぎには辟易するけれど。
頑張った甲斐あって図書館の予約が一番に回ってきた。
図書館のお姉さんにもすごいですねと褒められ(?)、ちょっといい気になってみたり・・・(笑)

さて、本作だが期待を裏切らない春樹らしい満足のいく作品だった。
過去の作品と比較するのもどうかと思うが、繰り返し描かれてきた喪失と再生がテーマにはなっているがこれまでの中で一番ストレートでシンプルな分かりやすい物語になっていると思う。
あらすじの説明は省くが、主人公がトラウマとなった自分の過去と対峙するきっかっけになったのは一人の女性との出会いで、彼女を手に入れたいと切望する様は何ともロマンチック。
春樹の作品の中でこれほど主人公がストレートに愛を言葉にしたことがあったかな。的外れかもしれないけどじーんとしてしまった。

隠喩めいたエピソードも少なかし、ファンタジー要素もない。
三人称で書かれているせいか、客観的に物事が淡々と進む。
無機質な春樹独特の文章の中にあっても、静謐で美しい喪失感があらゆるところに漂いうっとりとしてしまうほど。
ノルウェイの森を彷彿とさせるがむしろこちらのほうが好み。

物語の設定を現代に据え、具体的な地名、家族の描写、フェイスブックやiPodなどのいまどきツールなど今までには登場しなかったものが結構描かれていたり。
このあたりも新鮮だった。
春樹が苦手な人もすんなり入れるかも。

やっぱり春樹はいいな。
春樹好きの友人が言っていたけれど、年齢も年齢だしあと何作読めるんだろうと思う。
春樹の主人公さながら、早寝早起きを心掛け水泳とランニングを日課に長生きして行く末はノーベル賞と取ってほしいと切に願う(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 村上春樹
感想投稿日 : 2013年5月8日
読了日 : 2013年5月7日
本棚登録日 : 2013年5月7日

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コメント 5件

tiaraさんのコメント
2013/05/08

読めたんですねー。
一番なんてすごい!

今までの村上春樹を彷彿させつつ、現在にアップデートされてる感じありましたよね。

わたしもハルキストではない普通の愛読者ですが、村上春樹は読めるだけで幸せと思える作家です。
あと、何冊読めるんでしょうね~。

vilureefさんのコメント
2013/05/09

tiaraさん、こんにちは!

そうです、一番だったんです♪
でもうちの図書館、登録遅いですよね(^_^;)
tiaraさんは9番(でしたっけ?)でももっと早く回ってくるんですもんね。

分かります~。読めるだけで幸せですよね。
だから公平な評価ができているかと言えば疑問ですが・・・。
次回作いつになるんでしょうね。
また首をなが~くして待たないとですね(^_-)-☆

だいさんのコメント
2013/05/16

>頑張った甲斐あって図書館の予約が一番に回ってきた。

これは、すごいなぁ。

vilureefさんのコメント
2013/05/17

だいさん、こんにちは。

田舎の図書館ですからね~(笑)
残念ながら今月からネット予約が開始となり、競争も激化しそうです。
でも都会の図書館に比べると依然恵まれてますよね(笑)

だいさんのコメント
2013/05/17

良く行く図書館の待ち人数を見たら600でした。
東京では区ごとにいろいろな住民サービスがあります。(区民専用席とか)

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