ゼラニウムの庭

著者 :
  • ポプラ社 (2012年9月13日発売)
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本棚登録 : 438
感想 : 82
3

ある一家には100年以上守り続けた秘密があった。
明治末期に生まれた双子の女の子、豊世と嘉栄。
嘉栄は人よりも時間の流れが遅く、ゆっくりとゆっくりと成長する。
豊世がすっかり中年の女になった頃も、嘉栄は輝くような若さを放っていた。
豊世の葬儀の際も、嘉栄は女盛り。

歳を取らない本人ではなく周囲の人々の思いが色濃く反映されているのが、ありがちな不老不死の物語とは違うところか。
嘉栄の苦悩や孤独よりも、むしろ豊世が嘉栄の存在によって引き起こされる不安感や厭わしさが物語全体を覆っている。
双子で生まれて誰よりも近しい存在になるはずなのに、敢えて存在と遠ざけてしまう愚かしさ、哀しさ。
小説全体に流れる幻想的な雰囲気とあいまって、三島さんの文章力はさすが。

話は飛ぶが、知人の家にミーちゃんと言う猫が一匹飼われていた。
確か私が小学校の頃から飼われていたように思う。
我が家もその後、犬を飼ったり猫を飼ったりしていたがとうに亡くなっている。
しかし、みーちゃんはまだまだ生きていた。
私が成人しても、結婚しても、まだまだ確かに生きていた。
亡くなったのは私が30歳を過ぎてからのことだろう。
おそらく、ミーちゃんのいた時間は軽く20年を超えていたのではないか。
猫の年齢は20年を超えると化け猫の域とどこかで読んだことがあるが、猫は何年生きようが家族にひた隠しにされたりしない。
長生きだねー、で終わりである。
もちろん、猫同士で短命の猫が長命の猫を羨んだりもするまい。
人間てなんと愚かな生きものだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 大島真寿美
感想投稿日 : 2014年3月3日
読了日 : 2014年3月1日
本棚登録日 : 2014年3月3日

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