林芙美子『馬乃文章』、獅子文六『ある結婚式』、山川方夫『軍国歌謡集』の3篇を収録。
林芙美子さんの作品はちょっと自分には合わなかったのか、さらっと読みきってしまっただけだった。
山川方夫さんの作品は恋の狂気と盲目と、青春のほの暗さがからみ合って中々に虚しさを感じる話だったけれどそれだけに読み応えがあった。
幸福になることを主人公は《能力》なんてさびしいことを言っていただけに、救いがあるラストで安心した。
一番面白かったのは獅子文六さんの、主人公の自宅で小さな結婚式を取り仕切る話。
この結婚式の主役である若い二人が最初の内は全く結婚式に興味がなくて、家族の面目もあるから渋々式を挙げる…といった流れだったのに、式が始まってからの緊張感であるとか、これから幸せになるんだという決意を改めて宣言するところが本当に爽やか。
主人公も口下手で式の進行や準備をするのに非常に苦心しただけに、その感動もひとしお、というのが「ざまア見ろ」という台詞に集約されているのが微笑ましいラストだった。
愛ある毒舌っていうのはこういうことだと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
百年文庫
- 感想投稿日 : 2011年9月12日
- 読了日 : 2011年9月12日
- 本棚登録日 : 2011年9月10日
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