悪魔の辞典 (角川文庫)

  • KADOKAWA (1975年4月7日発売)
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感想 : 41
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今週は、アメリカ民主党全国大会。先週は、共和党全国大会。どちらも大会も今一つ盛り上がりに欠けていた。サプライズがなかったからか。この本は、大統領president(n)を以下のように定義している「国中のおびただしい数に及ぶ人間がそのうち誰一人として大統領に選びたいとは思っていないことが明白に知られている―これはこうした連中についてだけ言えるのだが―少数グループの指導的人物」。今回の大統領候補はどうなのだろうかとふと思った。

そしてもう1つは、nominate(v) 「(大統領に)指名する」。「政治的最高課税額にふさわしき者を指名する。野党の罵詈雑言(ばりぞうごん)の矢面に立たせるために、適当な人間を推挙する」。そうなのか。オバマ、ロムニー候補とも多額の選挙資金を集めているし、特にロムニー候補の場合、ヘッジファンドの経営者として莫大な収入を得ていたから言いえて妙だ。

 この辞典は、「悪魔」と付くだけに表の辞書的な意味とはかけ離れたしかし、地に足のついている意味が記されている。

 アメリカならではと思う言葉の定義の仕方がある。たとえば、「うそつき」を意味するliar(n)。「勝手気ままにうろつき回り、掠(かす)め取る職業に従事する法律家」。Lawyer(n)「法律家」に関しては次のように書いている。「法律の抜け穴に長じた者」。なかなかうまい定義だな。

 最近起きた出来事に関連する言葉では、次のものがある。たとえば、diplomacy(n)「外交手腕」を「自国のために虚偽を申し立てる愛国的術策」とある。中国政府及び韓国政府の対日政策にそのままぴったり当てはまる。

 ハーバード大学でカンニング疑惑がニュースになっていた。plagiarize(v)「剽窃(ひょうせつ)する」。ここでの定義は「ただの一度も絶対に読んだことのない他の作家の思想や文体をちょうだいする」とある。ウイキペディアからコピペしてみんな同じことを書けば、わかるというもの。

 納得のいかない価格と言えば、東京電力の電気料金の値上げ。price(n)「値段」に関しては、「元値に、それを要求する際の良心の消耗に見あう手ごろな額を足したもの」とある。東電に良心の消耗に見あうだけの手ごろな額なんてあるか、はてなマークが無限に浮かんでくる。

 この中にはないが1つ浮かんだので書いてみる。それは、「カネのかからないクリーンな政治」だ。モクモク訳ならこうする。「張り紙に掲げた目標のごとく、達成されることのないエアー標語。事務所、秘書、調査費など経費がかさむのを知っていながら、受けると思ってマスコミも連呼する。聞くだけで冷え冷えする」もう少し、一世を風靡した野茂秀雄投手のトルネード投法のごとく、ひねりがほしいかな。

この本を読めば、今日からあなたも立派なひねくれ者になれます。頭の体操をしたい方にもおすすめです。日本の小・中・高ではまず推薦図書のリストには載らないな。それどころかブラックリストに載る本だ。何しろ「素直、誠実な人になりましょう」が大好きな学校教育関係者だから。実際は、この本を読まなくても十分ひねくれ者検定の1級を取得しているハイレベルの方もいらっしゃる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年9月8日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年9月8日

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