このひとは、デビュー時からもうこんな感じだったんだなあと改めて思った。可南子の言動や考えのひとつひとつが著者のもののように思えた。これだけダイレクトに伝わってくると、普通息苦しくもなるけども、この作品は息苦しさをまったく感じることがなかった。
可南子の、マイペースながらもぶれないこころというものがよかった。潔くて、とても好感が持てた。
個人的には、ニキくんのエントリーシートにうれしかったことを書けっていわれたから、寿司を食べたことって書いたんだよ、僕はほんとに寿司がすきだから、ほんとにうれしかったんだ、というところに思わず考えさせられた。自分自身がほんとうにすきなこと、たいせつなことを書いているのに、文章で対面するひとには信じてもらうことができない。なんというか、理不尽さを感じるシーンだと個人的に思った。
なんだかのらりくらりと所在なく生きていても、それでも別にいいんだよ、といってくれている気がした。社会的な立場がない人間にも、少しだけ光明が見えているような。
(279P)
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
作者:ま行
- 感想投稿日 : 2012年12月27日
- 読了日 : 2012年12月23日
- 本棚登録日 : 2012年12月23日
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