西ヨーロッパの文明(本書では「ヨーロッパ帝国主義」)が何故、世界を席巻し、現代文明の価値基準の根幹を成すに至ったかを、中世からルネサンス期に勃興した「世界を定量的な数値で表すこと(数量化・視覚化)」という革命的なパラダイムシフトに焦点を当てて検証した西欧精神史。
たとえば数学が発達したのは「インド・アラビア数字」を採用したから、というのはなんとなくわかっていても、じゃあ、それ以前はどうだったのか、と言うことについてはよく知らなかったし、インド・アラビア数字で計算することが当たり前すぎて疑問を持つこともなかった。しかし、よくよく考えてみると(日本からしてみれば)ヨーロッパから入ってきたのに「インド・アラビア数字」と呼ぶのは不思議だし、「0」(ゼロ)の概念がインド発祥というのは知ってはいたけれど、それがどういう意味なのかよくわかっていなかった。が、本書を読んでそのことが氷解したのは言うまでもない。
その他、楽譜や遠近法、果ては簿記が中世ヨーロッパでどのようにして生まれて、今日までほとんど姿を変えることなく使われてきたかということを知るにいたって、なるほど西欧文明が世界を測る文字通り「モノサシ」となりえた理由がここにあったか、といちいち腑に落ちる。
尚、本書を読むにあたって「中世の覚醒」http://booklog.jp/users/xacro2005/archives/4314010398をあわせて読むと、中世ヨーロッパに古代ギリシアの知がもたらされた過程や、本書に登場する何人かの神学者への理解が深まることを付け加えておきます。
- 感想投稿日 : 2011年8月17日
- 読了日 : 2011年8月17日
- 本棚登録日 : 2011年6月26日
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