2052年、両親が殺されるという惨殺事件のあと、9年にわたって眠り続ける少女と、彼女の夢のなかにはいっていく男、そしてその息子の物語。
「残酷な神が支配する」の後に描かれた作品で、「ああ、あれはやっぱり萩尾望都にとってターニングポイントになった作品だったんだな」と感じる。もっとも、それを具体的に説明しろといわれると困るんだがww
ただ、きっと今までの萩尾望都なら、夢に入っていく男、トキオの息子、キリヤを主人公にしただろう。そして、ずっと彼の視点で描いていただろう。「スター・レッド」のように。
が、これは絶対的に、トキオの物語なのだ。
眠り続ける少女、青羽の物語だけれど(彼女の夢の中の世界、バルバラは彼女を中心に世界はなりたっている)やはり、夫として、父親として、不完全なトキオが、その不完全さをそのままに世界を愛する物語であるように感じた。
うん、そうだ。
キーワードは、親であり、不完全な世界、なのだ。
それにしても、説明不足で訳わかりません、っていうギリギリのラインで保持されている世界の美しさよ。
萩尾望都の世界が美しいのは、このあやうい中で美しいバランスを保っているからなんだと思う。
萩尾望都が読める、今に生きてて、本当に幸せ。
読書状況:読み終わった
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邦人作者名 は~ほ
- 感想投稿日 : 2010年6月16日
- 読了日 : 2010年6月16日
- 本棚登録日 : 2007年12月16日
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