とてもおもしろかった。知らないことを知るおもしろさ。
小説風な部分より後半の思考メモ的な部分が良い。

なるほどなぁとひたすら感心するし、知識も増える。

物知りな恋人の話を楽しく聞いている気分になった。

2017年6月5日

読み終わるのが惜しいのに、あっという間に読み終えてしまいました。
精神科にかかったことのある私には共感するところも多く、すっぽりと作品に浸かってしまいました。

私はいま色川武大さんにハマっています。すごく読みやすくて、ずんずんと読めてしまいます。面白いのかというと、よく分かりません。作家本人の非凡な人生と神経病による幻視幻覚がベースになっているので類を見ない作品なことは確かですが、果たしてそれが面白いと呼んで良いものか。

『明日泣く』『百』『狂人日記』と読んで、今の時点で感じたことは、色川武大さんは現代の作家さんだなぁということ。昭和四年生まれだから戦争を経験しているにも関わらず、そこはするっと後ろへ流して、でも旧い匂いは残っていて、その匙加減が私は好きです。

そして小説を書くのが本当に巧いと思います。作家の個性を主張しない文章の巧さがあります。言葉がキザじゃないのです。小賢しくないというか、まっすぐな文章というか、正直な文章というか、そういう感じがします。そんなところは大好きな北村太郎さんに通ずるところがあります。

それから、言葉が生きているとでも言うのでしょうか、ほぼ心象描写だけなのにそこに景色が見え、生々しい現実世界が広がります。

主人公が語っていくという形はどことなく太宰治っぽい感じがあります。

2016年12月7日

読書状況 読み終わった [2016年12月7日]
カテゴリ 日本文学

ダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』(山崎佳代子訳)読了。夢みたいな本でした。読んでいる途中にふと頭の中にぽっと『夢』という言葉が浮かびました。夢を言葉にしたら文字にしたら文章にしたらきっとこんな感じなんじゃないかと思いました。

夢みたいなんて変な感想だよなと思っていたのですが、巻末の山崎佳代子さんの文章を読んでいたら私の感じた感覚は強ち遠くもなかったようでホッとしました。

「映画のように映像をつないでいくこと、これによって、悲愴感を和らげることができる」とあるし、「文学とは、類なき人生を縦糸に、夢の言葉を横糸に織り上げていく手作業である」ともあります。「僕の子供時代は幻想だ、幻想によって僕の空想は育まれる…」と、キシュ自身も1987年のインタビューで語っているそうです。
映像と心象描写と空想や幻想が私に夢という言葉を思い浮かばせたのだと納得しました。

この『若き日の哀しみ』は、本当に短い幾つもの話が連なってできています。

キシュは旧ユーゴスラビアの作家で、この本は第二次世界大戦中に少年だったキシュの自伝的連作短篇集です。
父親はユダヤ人で、強制収容所に送られて帰らぬ人になりました。

時代背景が暗いので、作品の中を流れる空気も暗いです。
けれども、衝撃的で悲惨な事実を直接的には書かず、少年の心象描写とアイロニーとで描き出しているので、まるでおとぎ話のような様相を呈しています。
ある意味、詩のような、不思議な感覚の作品でした。

私は結構好きです。

2016年12月1日

読書状況 読み終わった [2016年12月1日]
カテゴリ 海外文学

とってもとっても面白かったです。
本を閉じることができなくて、ずんずんと読み進めてしまいました。

初めて川上弘美さんの本を読んだ時の衝撃を思い出しました。その時からだいぶ年を取ってその分たくさんの本を読んできましたが、その時以上の衝撃を同じ作家さんから受けるとは思いませんでした。文句無しの星5つ。人に薦めたくなる本です。

内容も構成も斬新で本当によくできていて、特に半分位から(読み手も作品の世界に馴染んで来たあたりから)怒涛のように展開していきます。
未来の地球を舞台に「人間」というものを描いていてとても興味深い作品でした。

これまでの川上弘美さんの感じとは割と異なっていて、もしかしたら川上弘美さんの別の感じが好きな人には微妙なのかも知れませんが、私は好きです。

2016年10月23日

読書状況 読み終わった [2016年10月23日]
カテゴリ 日本文学
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あっという間に読んだ。以前に読んだ『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』が良かったから、芥川賞をとったこの本も読んでみた。
私は『ジミ・ヘン…』の方が好き。絲山さんとか桜木さんとかも最初の頃の方が好きだったのと同じで、好きだと感じた鋭利な部分がなくなってしまった気がした。勢いとか斬新さとか衝撃みたいなものはやっぱり最初の1冊が一番強い。

そうは言っても、別に良くなかったわけではない。構成の試みも内容もおもしろかった。
ブクログのレビューはあまり評価が良くなかったけど、私はそれほど評価の低い作品だとは思わない。

でも、それはもしかしたら、『ジミ・ヘン…』を読んで、滝口さんを評価しているからこちらの評価も下がらないだけかも知れない。
こちらだけを読んだらまた別の感想を言うような気がする。『ジミ・ヘン…』が10だとするならば、『死んでいない者』は5、という感じ。


ずっと、いつかばあさんが死ぬことを悲しみ続けて生きてきた気がする。(p125)という一文は、とっても好き。

2016年8月21日

読書状況 読み終わった [2016年8月21日]
カテゴリ 日本文学
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深夜に読み始め、内容の過激さに夜が明けるまで眠れなくなるというはじまりだった。

今まで読んだ本の中で最も残虐で暴力的だった。身の毛がよだち、血の気が引いて、読めないところが多かった。すごい作品。衝撃的な本だった。

2016年5月17日

読書状況 読み終わった [2016年5月17日]
カテゴリ 日本文学

興味深く一気に読んでしまった。母静子との暮らしが知れて良かった。父である太宰治のこと、その死について、自分が愛人の子供であること、治子がどんな風に考えていたか分かってとても興味深かった。

2016年5月16日

読書状況 読み終わった [2016年5月16日]
カテゴリ 日本文学

ずっと読みそびれていた獅子文六さんをようやく読むことができました。
噂通り面白かったです。
主人公の性格がそのまま作品のテンポになっている感じで、この主人公の考えや行動がいちいち面白いのです。クスッとするような面白味というか、「こういう人っているよなぁ、分かる分かる!」という面白味があります。
THE娯楽という感じで本当に楽しく読めました。

主人公とその周りのキャラの濃い人々、舞台が愛媛というとちょっと『坊ちゃん』を思い出します。わざと『坊ちゃん』を思い出させるように書いたのではないかと思いました。『坊ちゃん』のコメディ。真っ直ぐでやんちゃな坊ちゃんに対し、こわがりで逃げ腰で長いものに巻かれて火中の栗は絶対に拾わない犬丸潤吉。『坊ちゃん』も主人公坊ちゃんの性格がそのまま作品となっているし、この作品が新聞小説ということもあって漱石を意識したのかなぁ、なんて思いました。

最後に掲載されている、獅子文六さんが書いた「【付録】てんやわんやの話」を読むと、獅子文六さん自身がとっても面白い人なんだなぁと分かります。目のつけどころや感じ方が多分今でいう芸人さんに近いような気がします。

装幀のイラストも好きです。ゆるっとしていて作品に合っていると思うし、こういう表紙なら若い人も手にとりやすいように感じます。

てんやわんやという言葉はこの本で改めて広まったそうです。びっくり。

読書状況 読み終わった
カテゴリ 日本文学

読み終えてしまった。。。
エリクソンの小説はどれも面白くて、いつも終ってしまうのを惜しんでなるべく少しずつ読む。後半なんてちびちびと読み進める。
だから、まず読了後に思ったのは「あぁ、終ってしまった」というがっかりと寂しさ。
このエリクソンもとっても良かった。すごく面白かった。
映画を観ているように読むことができたし、映画のような面白さがある小説だった。

やっぱり柴田元幸さんは翻訳が巧いよなぁと改めて思った。柴田さんが翻訳しているからエリクソンは面白いのではないかと思う。
アンジェラ・カーターの『花火』を読んでいた途中でこの『ゼロヴィル』に移ったから尚更そう思った。
柴田さんの翻訳というところで読んでみようと思ったりするくらい私は柴田さんも好き。


物語は映画を中心とした話。
『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーを剃った頭に刺青した主人公ヴィカー(Vikar)。映画に取り憑かれた映画自閉症の彼の物語。
ヴィカーとは対照的に私は全く映画に疎いけれど、何の問題もなく読むことができた。
私は『陽のあたる場所』すら観たことがないし、作中に出て来る数々の映画のうち『ある愛の詩』くらいしか観たことがないけれど、そして俳優や女優にも疎いけれど、面白く読むことができた。いつもと同じようにエリクソンの世界にすっかり呑み込まれた。

『ゼロヴィル』は、エンターテインメント性が高く、『Xのアーチ』に比べたらずっと軽やかで明るい。エリクソンの他の小説と比べて光を感じる小説だった。
エリクソンの他の小説を思い出そうとすると私の頭の中に浮ぶ画はどれも夜。けれども『ゼロヴィル』は暗闇ではなく、夜明けの白い画が浮んでくる。
シーンとしては夜や暗闇の方が多いし、内容はやっぱりいつものように現実と現実ではない世界が複雑に絡み合って、芯は深く重く、ハッピーとは言えない。現実にはあり得ない物語的な小説なのに、あまりにも現実的過ぎる。私は哀しみを感じたし、切ない気持ちにもなった。
それでも、読み終えてこの小説のことを思う時は朝の白い感じや薄い水色の空の画が浮ぶ。

兎にも角にも、とても面白い小説だった。
『陽のあたる場所』と『裁かるゝジャンヌ』くらいは観ようと思った(苦笑)


余談だけれど、読み初め、ふと「村上春樹さんが書きそうだな」と思ったりした。若かりし日の村上さんが若い頃の情熱で今の熟練さを持って書いたらこんな感じのものを書きそうだな、と。『ゼロヴィル』の特殊な断章形式だったり主人公ヴィカーのキャラクターだったりがそう思わせたのかも知れないし、村上さんの語りが翻訳小説風だからそう思ったのかも知れない。しかし読んでいくとやっぱりエリクソンでなければ書けない、エリクソンの世界があって、どうして村上さんを思い出したりしたのだろう?と不思議になるのだけど。

2016年4月6日

読書状況 読み終わった [2016年4月6日]
カテゴリ アメリカ文学

とてもおもしろかった。
私は『黒い時計の旅』を読んでエリクソンファンになったのだが、これを読んで『黒い時計の旅』を再読したくなった。『黒い時計の旅』の次に書かれた作品だから、どこかふたつは似ていて、これぞまさにエリクソンという作品だと思う。
全ての作品を読んだわけではないが、パラレルワールドの複雑さで言えばおそらく断トツなのではないかと思う。幾つもの歴史が、幾つもの時代が、幾つもの世界が、同時に存在し絡み合っている。
ひとつの決断がその後を左右する、という当たり前な事に源はある。
ふたつの選択肢があれば、そこにはふたつの歴史がある。
ややバイオレンスでエロティックな感が強いから、苦手な人も多いかも知れない。

2016年3月20日

読書状況 読み終わった [2016年3月20日]
カテゴリ アメリカ文学

短いエッセイなので数十分で読めてしまう。作品名のように、カフェで珈琲を飲みながらゆっくりしている時に読むのに良いかも知れません。

2016年2月5日

読書状況 読み終わった [2016年2月5日]
カテゴリ 日本文学

田村和子さんがどんな人だったのか分かる本。
これまでぼんやりとした想像でしかなかった和子さんが、実在した人として輪郭がくっきりした。

印象に残ったのは、ねじめ正一さんの『荒地の恋』を読んだ和子さんが「あの本のなかの私は嫌だな。わたしがすれっからしの女に書かれている。」と、作者橋口さんにプンプンするというエピソード。
私にはこのエッセイの和子さんも『荒地の恋』の和子さんもさほど変わりはないし、どちらかというと『荒地の恋』の和子さんの方が真面で可憐で、『いちべついらい』の方はかなり身勝手に思えるけれど.....。

作者の橋口幸子さんは田村和子さんと一緒に住んだり面倒をみていて、こういう人とよく一緒に居られるなぁと思った。それくらい和子さんは面倒な人。面倒な人だけど苦しいほどの哀しみをも感じる人。

和子さんのその風変わりな人柄は、父親が彫刻家高田博厚であることが影響していると思う。人格よりも才能があることが大事で、父親が一番の天才で二番目が夫の田村隆一さんだった。天才が身近にいるというのは精神的に何か影響を及ぼすと思う。
それに早くに優秀な母も亡くし、小学生の時には賢い妹も亡くしている。自分も16才~22才まで結核療養所にいた。死が身近にあること、死がもたらす深い喪失。
和子さんの身勝手さや我儘さはそういう背景の上にあるので厄介な気がする。

2016年2月10日

読書状況 読み終わった [2016年2月10日]
カテゴリ 日本文学

初めて読んだアンナ・カヴァン。

ちくま文庫版にはクリストファー・プリーストの序文があり、本書がどんな作品かが書かれていたので、初めての私にはとてもありがたかった。
『氷』はスリップストリーム文学で、広い意味での " スリップストリーム " に適合すると考えられる作家は、アンジェラ・カーター、ポール・オースター、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、ウィリアム・S・バロウズ、村上春樹。と書かれていて、私はオースターもボルヘスも村上春樹も大好きだから、期待が持てた。解説はこれまた好きな川上弘美さんだし。

さて、読んでみて、感想を書くとなるととても難しい。
私はとても面白かった(面白いというかすんなり読めたというか読み心地が良かったというか、とにかく良かった)。
良かったけれど、すごく良かったというのでもなく、共感とか感心とかそういうものもなく、何だか不思議な作品だった。たぶん、それが魅力なんだろうとも思う。
解説で川上弘美さんが言っているが、《 読者は「私」と「少女」のみちゆきになめらかに寄り添うことだろう。どこの国ともしれぬ場所に、やすやすと連れてゆかれることだろう。抽象的なようでいながら。たいそう具体的なこの小説に伴走するように、共に疾駆すはじめることだろう 》というのはまさにぴったりな表現だと思う。
それから川上さんはこうも言っている。
《 カヴァンの小説は、序文に挙げられた「スリップストリーム」の小説よりも、ずっと「狭い」気がするのだ。 中略 カヴァンの「狭さ」は、ほかに類をみない「狭さ」なのだ。その狭い隙間に、体をするっとすべりこませたが最後、もう二度と出られなくなるような。そして出様として、さらに狭い奥へ奥へと進んでゆくと、もう入り口は全然見えなくなっていて、でもその先も見えなくて、絶望してしまうような。絶望してしまったすえに茫然とたたずんでいると、今までに感じたことのない不可思議な心地よさ、がやってくるような、つまりその絶望感はある種の官能を刺激するものであるような。 》
これまた、言い得て妙、さすがに作家さんはうまいこと言うなぁと思う。私なんかが感想を書くよりずっと分かりやすく的を得ている。

そんな小説で、そして全体の感想としては良かったのだけど、最後の1/4か1/5くらいからの十数ページはつらかった。語り手の男のころころと変わる考え方についていけなくなって、正直苛立って、投げ出したくなった。大阪弁で言うなら「なんやねん、自分(怒)」という感じ。
でもそれ以外は本当におもしろい小説だと思う。

2016年2月4日

読書状況 読み終わった [2016年2月4日]
カテゴリ イギリス文学

エリクソンワールド全開で、今回も良い小説でした。やっぱりエリクソンは良いです。やっぱり好きです。

訳者あとがきの中に各紙レビューが書かれていました。
どれも的を得ているし同意見だったので、そちらを幾つか引用抜粋します。
それを読めばこの本がどんな物語のどんな本なのか分かると思います。


痛々しいほどの誠実さ、人間的な挫折に対する謙虚な認識、まだ手遅れではないという、その希望的なメッセージ(ロサンジェルス・レビュー・オブ・ブックス誌)


さまざまなアクションや時間や大陸、リアリティを越えて響き合う (ニューヨーク・タイムズ文芸付録)


本作はこの狂気の時代において、小説にまだ何ができるかを私たちに教えてくれる(ボストン・グローブ紙)


エリクソンの荒々しくジャズ的なヴォイスは独自のものだ(ワシントン・ポスト紙)


美しく、エレジー風の物語の糸や登場人物が、リアルでも空想的でもある迷路の中で、失われた環をつまずきながら進む。家族とそのアイデンティティをめぐる、複雑かつ空想的なタペストリーだ(カーカス・レビュー誌)


本作は1960年代以前にまで遡る、より大きな物語を、つまり変形を被りやすい大統領選を巧妙に取り込んでいる。エリクソンは、メタフィクションの技巧や偶然の出来事、エコーなどを巧妙に使いこなすことで、この物語を語りそのものに関する考察へと変身させる(ニューヨーカー誌)


現在と過去のヴィジョンのすべてが、万華鏡のように鮮やかに織りなされ、エリクソンの手腕と情熱がしめされている(スーザン・ストレート氏)

2016年1月11日

読書状況 読み終わった [2016年1月11日]
カテゴリ アメリカ文学

装幀がすごくイイ!! こういうの大好きです。
装幀と本文絵を手がけたのは司修さん。

長谷川郁夫さんは小沢書店(という出版社。てっきり本屋かと思っていました。苦笑)を創立し、文芸編集者として多くの作家さんと関わった方で、その経験から本書は書かれています。

静岡新聞の日曜読者面に連載されていたもので、季節の様々な事柄(多くは作家の命日)から思い附く(思い出す)作家のエピソードが2ページに収められ、春〜冬の4章で成っています。

その短さが読みやすく、また、実際に作家さんと面識があるので、その作家の人となりが分かるのも興味を惹くところです。

知らなかった作家も多くあり(読んでみたいと思っていた作家さんも含め)、作品を引用してくれているのも私には有り難かったです。
どんな文章を書く作家さんなのか事前に知ることができたり、読んでみたいと思ったり。

それにしても2ページによく纏められるものだなぁと感心してしまいます。引用や作家とのエピソードや取り上げた季節の物についてや自身の感想まできちっと2ページに収めているのだからすごいです。


多くの作家(画家や彫刻家なども含む)が登場します。名前さえ知らなかった人もいます。まだ読んでない人や好きな作家もいます。
この本を契機に読みたい作家さんが増えました。

メモとして知らなかった作家さんの名前を挙げておきます。括弧内はメモ。

・高田博厚(彫刻家。田村隆一の義父だと後から知った)
・飯田龍太
・中野孝次(母校(國學院大学)の教授だったらしい)
・吉田健一(読んでみたいと思っていた。引用を読んで、やっぱり良い感じがする)
・渋沢孝輔(ランボー研究のフランス文学者。詩人)
・山本健吉(文芸評論家)
・飯田善國(彫刻家。詩人)
・式場俊三(編集者?)
・平岡篤頼(バルザックなどの翻訳。フランス文学者)

・田久保英夫
・清岡卓行
・塚本邦雄(歌人)
・辻嘉一(日本料理「辻留」料理人)
・永井龍男(江戸っ子作家の最終走者)
・鈴木六林男むりお(俳人)

・後藤明生
・稲垣足穂たるほ(リュナティックな作家)
・日野啓三(文芸評論、ルポルタージュ。のちに小説)
・野々上慶一(古本屋兼出版社・文圃堂の主人)
・大原富枝
・深沢七郎
・山室静(詩人。信州・佐久で堀辰雄らと「高原」を発刊)

・佐多稲子
・中井英夫
・福原麟太郎
・須賀敦子
・中里恒子(横光利一に師事。川端康成、堀辰雄とも親交があった)
・濱谷浩(写真家)
・山口哲夫(詩人)
・中村眞一郎
・武満徹(作曲家)
・磯田光一(文芸評論家)
・円地文子

2015年11月29日

読書状況 読み終わった [2015年11月29日]
カテゴリ 日本文学

マンガみたいな装幀。こういう装幀じゃないと若い人に手に取ってもらえないんだろうなぁ。
ソフトカバーでフランス綴じというこだわり。

物語は海運業界のヤクザの話です。
昔の知り合いがこの業界にちょっと関わっていたのでその人のことを思い出しました。海はヤクザの管轄だから話をしに行く時は強面にして出かけて行くとその人は言っていました。当時私はあまり良く分かっていなかったけれど、この本を読んでその世界が少し分かったような気がしました。

前回読んだ『ブルース』もイケメンヤクザの話だったけれど、今回もイケメンヤクザです。そしてその男に惚れる女が語り手です。

そういう特殊な話なので、苦手な人や読みにくい人も多いのではないかと思いました。
時代は昭和30年代、舞台は北海道根室。
主人公の女性は地元名士の娘で、家出をして花街で働き、ヤクザな男と結婚して姐さんになる、という人生は入り込みにくいように思います。
でも、小説なのだから、これくらい突飛な方がいいのかも知れません。映画とかドラマとかならこのくらいでないと面白くないのかも知れません。

感想は、珍しく何もないです。
物語は面白かったけれど、なんにも思わなかったです。物語を物語として楽しんだだけです。物語から何か心に強く感じるというのはまるで無かった。

でも、桜木さんの文章が良いので(空気感が素晴しいので)どんどん読み進められました。自分も主人公と同じ時同じ場所にいるように読めました。
それはやっぱりすごいことです。

2015年11月6日

読書状況 読み終わった [2015年11月6日]
カテゴリ 日本文学
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詩人・北村太郎の話。実話。
家族の了承は得ているらしいです。

Amazonのレビューには受け入れられないという意見も割とありました。
フィクションだったら私も違った感想かもしれません。でも、これはノンフィクションであり、北村太郎という人間の話だと知って読んでいるので、私は読んでいる間じゅう胸が苦しくて胃が締め付けられる様に切なくて、最後は涙が止まらなくなりました。

若い人には受け入れられないだろうと思います。人生の終わりが見えるというか、長く生きないと分からないように思います。
それから真っ当な人にも分からないだろうと思います。精神を病んでいたり色々と抱えている人間でないときっと分からないんじゃないかと思います。
奥さんを捨てる北村の身勝手さに憤慨するレビューも多々ありました。けれども、私はあまりそうは思わず、逆に奥さんや家族や安定というこれまでの幸福すべてを捨てる潔さにただただ驚きました。私は潔く捨てれません。

北村さんは自分にも他人にもまっすぐ正直な人で、お人好しで、強い。
だいたいの人は北村さんみたいに生きられません。嘘つきで、自分勝手で、弱い。

心の病気はだいたいは分かってもらえません。
恋愛も本人にしか分かりません。
私はこの作品を不倫話と位置づけるのは間違っていると思います(私は人が人を愛するのに不倫という言葉を当てることにそもそも疑問を持っている人間なので)。
不倫話にこの本の本質があるわけではないと思うのです。
この本は北村太郎という人間の話です。そして彼の周りの人間の話です。「荒地」の詩人たちとの繋がりから見る北村太郎。
いいとか悪いとかではなく、北村太郎を知る本だと思います。
彼がどんな人であったのか、どんな人とどんな風に過したのか、彼がどんなことを考えていたのか。

私が泣けたのは彼のまっすぐな生き様が、彼のまっすぐな言葉が、あまりに心に深く刺さってどうにも堪えられなくて涙が溢れました。

「愛している」という言葉のまっすぐさ。
「愛した」ことへの責任。

すべてを正面から受け止めることのできる芯の強さ。

たとえば太宰治とは真逆で、北村太郎は生から逃げないのです。
これを読んでから太宰治を読むと、太宰治が女々しく感じてしまいます。


私はこの本を読んで、彼の眼差しや彼の人柄や彼の詩に触れて、北村太郎が大好きになりました。詩集を読んでみたくなりました。

そして、こんな風に書けるねじめさんはすごいと思いました。ねじめさんは初めて読んだのですが、有名なだけあってやっぱり巧い作家さんだと思いました。

2015年10月30日

読書状況 読み終わった [2015年10月30日]
カテゴリ 日本文学

 鉄道開発を背景に
 日本を流れた
 百年の時間を描く
 著者最高傑作。

と、帯にあります。確かに「鉄道についての歴史と百年の間の物語」でした。
でも、「電車道」というほど鉄道開発の話というわけではありません。私としてはもっと鉄道に沿ったの方が知らない事を知る楽しみがあってよかったように思います。

途中、ねじめ正一さんの『荒地の恋』を読んでしまい、そちらがものすごく良かったので、戻って来てから何だか物足りなく感じました。『荒地の恋』が実在の詩人・北村太郎の本だったので、『電車道』の人物たちが薄っぺらく感じました。
その前には滝口悠生さんの『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読んでいて、こちらが作家の伝えたい思いが情熱を持って溢れていたので、『電車道』の淡々とした物語が物足りなく感じてしまいました。

電車が走り始める頃からの百年の間の話、という意外に何もないのです。
何人もの登場人物が少しずつ繋がってはいるのですが、そこに意味があるわけでもなく、言うほど電車と関係もない。
何というかバラバラとしている感じでした。

文章が読みやすく丁寧なので、面白く読めましたが、私は先の2作の方が良かったです。
鉄道会社を興す男の話は小林一三を思い出しました。

2015年11月3日

読書状況 読み終わった [2015年11月3日]
カテゴリ 日本文学

どことなく太宰治に似たところがあるように思いました。一人称の長い独白、若さ特有の心情、深い部分への疑問。そういうところが太宰を思い出させました。

人間の記憶の曖昧さについて、他者との関わりというものについて、思いというものについて、五感というものについて。
小説の時代は現代であっても主題は時代を問わないもので、けれども書き方は斬新さがあって、新しい小説だと思います。
まだ若い作家さん(1982年生まれ)なのに本当にすごいと思います。

要らないなぁと思う部分も多々あったけれど、それでもとても良い作品だと思いました。他の作品も読んでみたいと思いました。

2015年10月26日

読書状況 読み終わった [2015年10月26日]
カテゴリ 日本文学
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太宰治からの津軽繋がりで読みました。
津軽を舞台にした短編6篇が収められています。
『津軽じょんがら節』と『津軽世去れ節』が特に良かったです。津軽三味線やじょんがら節の歴史がとても興味深く面白かったです。津軽弁も味わい深くて良かったです。

2015年10月23日

読書状況 読み終わった [2015年10月23日]
カテゴリ 日本文学

眠る前に少し読もうと思ったのに最後まで読んでしまいました。
現代の小説は文章も読むというのではなく物語を追うのであっという間に読み終えます。よくできたお話を聞いているような感じです。
大正から昭和初期の小説だって物語なのに、こちらの方が文章を読んでいるという感じがします。小説の中に書き手の存在があり(存在を感じ)、一文一文が美しく景色があり、余韻があるようにも思います。現代の物語の方が物語内容重視という印象です。

2015年9月18日

読書状況 読み終わった [2015年9月18日]
カテゴリ 日本文学
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叔母と一緒にいる時にこの本を出して読もうとしたら、「伊藤整の代表作って何?」と問われて困ってしまった。
伊藤整の名前は有名だし、学校で習う人物なのに代表作というものが浸透していない作家であるように思う。そもそも伊藤整という人物について学校ではどのように習ったのかも覚えていない。
私が伊藤整の作品を読むのはこの本が初めてで、全くと言っていいくらいに伊藤整自身のことを知らずに読んだ。

とても興味深くおもしろかった。
少しのフィクションと架空の人物があるらしいが、ほぼ伊藤整の自伝的小説で、伊藤整の関わった多くの作家たちの繋がりがとても興味深かった。
伊藤整と同じ学校に小林多喜二がいて、伊藤整の自伝でありながら小林多喜二についても識ることができる。
同じ様に芥川龍之介や梶井基次郎や高村光太郎やその他たくさんの作家たちの一面を見ることができる。それが本当におもしろい。
他人(友人や同僚や作家たちなど)についての伊藤整の書き方は評論のような書き方で、一刀両断まっすぐな意見を述べ、作品と創作への考え方を含めた性格を前面に推した書き方をしているのが素晴しいと思う。分析するのが得意な伊藤整だからできたことだと思う。
この本の中で小林多喜二らたくさんの作家たちはみんな生きていて、その魅力を存分に振りまいている。そこがこの本の一番の魅力に感じる。

この時代の北海道の風景や生活もとても興味深かったし、その時代の文壇についても興味深かった。

伊藤整青年の性格や考え方に共感するところもあった。若い頃の、絵でどうにか有名になりたいと願っていた頃の自分と重なる部分が多々あり、読みながら「わかるな〜」と唸ってしまうようなところがいくつもあった。

明治大正文学が好きな方にはおススメの本。読んで損無しの一冊。

2015年9月13日

読書状況 読み終わった [2015年9月13日]
カテゴリ 日本文学
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やっぱり山田稔さんの文章は読みやすくて好きです。
老人のエッセイという部類で考えると、庄野潤三さんよりは堅く、串田孫一さんよりはくだけた感じ。私の中では洲之内徹さんと山田稔さんは同じ匂いがします。

私は自分がじめっとしている分、からっとした男性的で、クールで、客観的な文章が好きです。
山田稔さんの文章は、「ちょうど良い塩梅」だよなぁといつも思います。
庄野潤三ほど女っぽくなく、串田孫一ほど堅くなく、長谷川四郎ほど線が細くなく、洲之内徹よりは近しい感じがし、室生犀星のような飄々としたところがあり、外国文学の良いところも感じ、エスプリとニヒルとドライのスパイスも多からず少なからずのいいバランス。

山田さんはいいとこどりの文章を書く人だと思います。
そんな山田稔さんの文章スタイルが出来上がる元となった話などが書かれていてとても興味深く読みました。

どの話も興味深く、胸に残る、心にじんとくる文章でした。

装幀も好きです。装幀は林哲夫さん。

2015年8月31日

読書状況 読み終わった [2015年8月31日]
カテゴリ 日本文学
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エロ描写が多いけど、桜木さんらしい空気感はそのまま。
こういう『繋がりのある短編小説』を書くのが桜木さんはうまい。
ひとつひとつは微妙かもしれないけど、全体の繋がりでみると「うまいなぁ」と、思う。

ひとりの男とその男に関わったたくさんの女たち。

自分も誰かの物語の一部なんだよな、とあらためて気付かされた。


読んでいて色々な個人的なことを思い出して苦しくなって悲しくなって勝手に涙が出た。

沢山の女性と付き合ってきたセックスの巧い男性のことや、昔付き合っていた男性のことを思い出して、恋しくなって悲しくなって苦しくなって一度涙がぽろりと零れたら止まらなくなってわんわん泣けてしまった。

雪山で自殺するイメージやセーヌ川やドナウ川で身投げするイメージが離れなかった。


物語の内容にというのではなく、桜木さんの文章が醸し出す暗さや孤独感みたいなものに、私の心がすっぽりと取り込まれてしまったんだと思う。

相変らず冷たくて閑散とした世界だった。
湖に浮ぶ月みたいな小説。

やっぱり桜木さんの小説は好き。私に合っていると思う。
私が描きたい世界の文章版。


この装幀は小説のイメージに合っていると思う。
人のいない駅のホームというのは内容に沿ったモチーフだ。
モノクロームが似合う感じの小説だった。



人生の断片であり、ひとりの人生の記録である小説。

2015年5月8日

読書状況 読み終わった [2015年5月8日]
カテゴリ 日本文学
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読み初めたときは「こっちの方が桜木紫乃さんぽいな」と思った。
そして少し読み進めてみると「いや、これは村上春樹さんだ」と思った。

2/3を読んだ時点で私の印象の絲山さんは少しも無かった。むしろ村上春樹さんを読んでいる錯覚にさえ陥った。

村上さんの書く《ぼく》に『離陸』の《ぼく》は非常に似ていると思う。
知的で女性にもてる(本人はそう思っていないのに)感じとか、社会との距離感とか考え方とか、女性への接し方とか、すべてが《「やれやれ」というあの村上節のぼく》に似ていると思った。
文章の感じもトーンも村上さんにそっくりだった。

私は村上春樹さんが好きで中学生からずっと読んで来た。村上さんの作品の中に出て来るような、静かで知的で孤独な人間に憧れてきた。
本当に『離陸』の2/3は村上春樹さんの作品みたいでちょっと驚いた。そして村上春樹好きとしては面白くてグングンと読めた。

ところが残り1/3になって、全体が散漫になる。無理矢理終らせようとする気配がある。
2/3が面白かっただけにとても残念に感じた。
うまく言えないけれど、どんどんと陳腐になっていくような感じがした。
何となく勿体無いなぁと思った。

だから全体の感想がとても難しい。

2015年4月23日

読書状況 読み終わった [2015年4月23日]
カテゴリ 日本文学
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