ボヴァリー夫人 (新潮文庫 フ 3-1)

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感想 : 62
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 辻原登「東京大学で世界文学を学ぶ」に燃え尽きる小説として紹介されている。アマゾンで中古品を取り寄せ読み始めると、なんだか似たような作品を読んだことがある。読み進めるとどうも知っているような気がする。本棚を見たら「ボヴァリー夫人」の文庫本が立っていた。以前に途中まで読んで挫折していたらしい。

 ボヴァリー夫人といえば、一般的な見方は「平凡な夫との生活に飽きたらず、浪費と不倫を重ね、最後には自殺する」というストーリーだ。途中繰り返される自然描写や登場人物の心理描写はしつこい程で、これらを省いたら全体の文章は半分以下になってしまうだろう。

 でもこんなのどこにでもある。フローベールはそんなに凡庸な作家ではないはずだ。実際に起こった事件を参考にこの物語を創作したといわれているが、事実かどうかわからないらしい。
 始めのうちはうるさいと思った、人物の内面をこれでもかと言うほど描く手法は、写実主義といわれるフローベールの真骨頂なのだろう。その証拠に物語の後半は一気に読むことができた。登場人物の客観的な心理分析はさすがだと私は思った。

 当時、風俗を乱したという理由で起訴されたそうだ。しかし法廷でフローベールは「ボヴァリー夫人は私だ」と言い放ったという逸話はあまりにも有名だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2014年5月1日
読了日 : 2014年5月1日
本棚登録日 : 2014年4月13日

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