もともとアート作品が好きで、自伝を読んでから小説も読んでみたいなあと思っていた草間弥生。1984年の作品が、なんと今になって文庫に!(嬉)。『クリストファー男娼窟』『離人カーテンの囚人』『死臭アカシア』の3編が収録されています。薄いし軽いから通勤電車で読もうと思ってたんだけど、中身パラパラっと見たら電車で読むにはちょっと危険な単語満載だったので(笑)結局家で読みました。
文章自体は、巧いというのではないのだけれど(同じような表現を反復しがちなところとか森茉莉ぽかった)とにかく表現の仕方が独創的で、時折はっとするような美しい描写や、目からウロコの真理がちりばめられていて、ぐいぐい引き込まれてしまう。現実に見えているものも心象としてしか見えていない幻覚のようなものも、描写の仕方が絵画的というか、言葉なのに極彩色に見えてくる気がします。
表題作は、男娼の話ということもあって、ジャン・ジュネの作品のような世界観でしたが、コーヒーの中に蛾が飛び込む場面とかすごく印象的で、書かれていることは生々しい性の話なのに、ラストはいっそ幻想的。『死臭アカシア』のラストシーンなんて、まるで安吾の『桜の森の満開の下』かという美しさで、グロテスクな死姦の話のはずなのに、なんともいえない余韻が残りました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
>か行
- 感想投稿日 : 2012年11月12日
- 読了日 : 2012年11月10日
- 本棚登録日 : 2012年11月6日
みんなの感想をみる