アマノン国往還記 (新潮文庫 く 4-13)

著者 :
  • 新潮社 (1989年12月1日発売)
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感想 : 11
5

モノカミ国から、モノカミ教の宣教師P(パードレでありパパである)が、鎖国中のアマノン国へ派遣される。大勢の宣教師が向かったものの、アマノンのバリヤに阻まれ、侵入に成功したのはPの船のみ。この時点で、ああまるで卵子に向かって大挙して押しかけるも、受精に成功する精子は一匹だけ・・・って感じに似てると思ったのは、読み終えた後で思えば結果大正解でした。

設定は一見近未来風。おそらくモノカミ教は名前通り世界でもっとも有名なあの一神教、そして鎖国中のアマノン国は、首都トキオやキオト、その風俗から察するに、日本の未来の姿と思われる。異国人であるPが、見知らぬ国を探訪してゆくという点では、解説にもあったように「ガリバー旅行記」的でもあり、ややグロテスクでシニカルでブラックなユーモア満載のパロディっぷりはこちらもガリバーをモトネタにしている「家畜人ヤプー」とも共通した印象。そして今読むと、アマノン国の実情は、さながら男女逆転「大奥」の世界。男子は単なる精子提供者として管理され、政治その他の要職はすべて女性で占められている。

布教の目的でやってきたPが、次第にアマノンの風俗に染まり、かつ、布教を口実に自分の種まき活動(笑)にひたすら精出してゆく(←文字通り)経緯がなんとも、滑稽ながら説得力があって面白い。宗教に対する作者の視点も個人的には痛快。

最後に思いがけないオチがきてびっくりさせられるのだけれど、なるほど、これを「往還」というならそうでしょう。最初から最後までとても面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ○倉橋由美子
感想投稿日 : 2013年12月23日
読了日 : 2013年12月22日
本棚登録日 : 2013年11月27日

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