シェイクスピア作品の中で最も残虐といわれている戯曲ですが、そのせいかポピュラーな新潮や角川、岩波の文庫では収録されていません。野望や復讐がモチーフなのは他の悲劇作品も同じだけれど、古代ローマが舞台のせいか、よりいっそうギリシャ悲劇的なえげつなさがあるのかも。
悪役とはいえ、大物感のある女王タモーラと、その情人エアロンは、悪っぷりが徹底していてブレないので、そのようなものとして割り切れるのだけれど、同じ悪党でも親の七光りで小物感の強いタモーラの二人の息子には正直あまりのクズっぷりに嫌悪しか感じられず、殺されて挽肉にされてパイに焼かれそれを母親に食べさせる・・・という悪趣味極まりない最期にも全く同情できず、むしろ痛快と思ってしまう自分が怖い。この二人のクズ息子たちに夫を殺され、強姦されたあげく、それを隠蔽するために舌を切られ両腕を切られたラヴィニア(タイタスの娘)の受けた屈辱に比べたら!(憤)
そういう意味では、悲劇ではあるけれど、悪人は殺されて復讐が完遂されるという一種のカタルシスがあり、他の悲劇よりもわかりやすく単純な構造なのかも。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
★イギリス・アイルランド
- 感想投稿日 : 2015年4月23日
- 読了日 : 2015年4月23日
- 本棚登録日 : 2015年4月13日
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